俺様御曹司による地味子の正しい口説き方 ※SS集
「キヨー。お前、突然現れて勝手に杏の事連れてくなよ。杏は俺のなの、離せよ」

引き寄せることは諦めて、ただ呆れたようにキヨに答えれば、キヨはあからさまに嫌な顔をして、視線を俺の後ろに投げつけた。

「ふん、そんな人と一緒にいて杏ちゃんがここに居たいと思ってるわけ無いでしょ?何やってんのよ」

俺の後ろ……あ、あぁ。
まだいたのか。

後ろで呆然としている弥生さんがキヨを見て目を見張る。

「っ、……水守清香?」

「おひさしぶりですぅ」

心底どうでもよさそうに挨拶だけ交わすキヨ。
その態度に、

「あれ?お前、弥生さんの事覚えてんの?」

「は?忘れてたわよ。だけど、今顔見て思い出したの!ちょっと、あんた今更何か用?」

「えっ?キ、キヨさん?お知り合いですか?」

「………………恭一とは大学までずっと一緒だったから」

杏は「あぁ、」と小さく頷いてチラリと俺の顔を見てきた。
何かを考えているようで、妙に緊張する。

「今杏と歩いてたら見つけられて、声をかけられただけだよ。それだけだ。もう俺らにも用はないから帰るところだ」

きっぱりと言い捨てて、弥生さんに拒絶の態度をとる。


「だから、杏。ごめんな。一緒に帰ろ?」

本当にごめん。
調子に乗っただけなんだ。
いまだキヨに捕まれている杏に手を差し出して目をそらさずに懇願する。

目を丸くして、手を取ることを躊躇する杏。
< 49 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop