俺様御曹司による地味子の正しい口説き方 ※SS集
加藤の問いに答えるつもりもなく無視してトレーを返却口へ戻して杏を追いかけた。
後ろで華さんが加藤に説明する声がした。
「あのね、小早川君は杏が好きで好きで離れたくないから、杏を迎えに行くのよ」
どんな説明してんだよ。
違わないけど、
その通りだけど、
人に言われると、俺、超バカみたいじゃん!
違わないけどさぁ!
でもここで反論してる暇はない。
早く杏の元に向かわねば。
そう足を早める。
この辺で給湯室から戻ってくる杏と鉢合わせてもいいくらいなのに、人の足音すらしない。
食堂へ来るときも必ず階段を使う杏がエレベーターを使うはずはない。
すれ違った訳でもないはずだ。
嫌な予感がする。
苛立つ気持ちが沸き上がりながら営業部のフロアまで上がって来ると、階段横の給湯室から男と女の声がした。
嫌な予感的中。
杏の声だ。
「あの、すみません。私、食堂に戻らなくちゃ行けないのでどいてもらえませんか?」