俺様御曹司による地味子の正しい口説き方 ※SS集
このやりとりだけで現状を把握したキヨが再び弥生さんに向き直る。

「ねぇ。そこまで言われて何を期待してるの?前にも言ったことあると思うけど、『自分だけ』なんて大きな間違いだから」

「なっ、あんたがあの時そうやって私をけしかけたから私達別れちゃったんだから!」

「結果、別れたって事実が何よりも物語ってるじゃない。私が口を挟まなくても遅かれ早かれ恭一から振られてたわよ。ねぇ恭一?」

「まぁな。キヨが口だしてたのは知らなかったけど、そろそろとは思ってたからな。私の物扱いもマジうざかったしな」

「っ、~~~~~さいってい!!!」

弥生さんは顔を真っ赤にして、その場からやっと離れてくれた。
逃げ出した。と、いうように。
これで、この先彼女に会っても声すらかけてこないはずだ。

杏は俺たちのやりとりをおろおろしながら傍観していた。
過去のあれこれを杏に聞かせたくはなかったけど、昔の俺とは違うってことを分かってほしかった。

なぁ、杏。
帰ろう?
何度でも謝るから。


もう一度キヨの隣にいる杏に近寄って手を伸ばした。


「俺が望むのは、杏からの気持ちだけだから。束縛も嫉妬もお前から欲しいんだよ。嫌な気持ちにさせて悪かった。
なぁ、俺はお前のもんなんだろ?」

戸惑いで瞳が揺れる。
こんなときでも杏の大きな瞳は綺麗だ。

「杏ちゃん、どうする?恭一もいいけど、私とご飯も楽しいわよ?」

おどけるように杏に問いかけるキヨ。
そんな笑顔を向けられて、場の空気が少し和む。
キヨがそんな風に思いやるなんて、本当に気に入ってんだな、杏の事。
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