俺様御曹司による地味子の正しい口説き方 ※SS集
こーゆう事は『鈍い』で片付けていいものかどうか分からないけれど、私には恭一君が今機嫌を損ねている理由が見当もつかなくて。
華ちゃんや加藤さんに気づかされることがいっぱいある。
なんでそんな事が分かるんだろう。
「━━━っ、あのな。杏は悪くないから。だけど、ここで言うとこいつらが煩いから夜、電話する」
少し不安になった気持ちを察してくれたのか、頭を優しく撫でながら機嫌を治してくれた。
良かった。
食事が終わって、そのまま外回りに出ると言う恭一君と加藤さんと社食で別れて、華ちゃんと自販機コーナーに立ち寄った。
「あ、あの。華ちゃんは恭一君の怒っている理由は分かりますか?」
カフェオレのパックを買って、一口飲みながら尋ねてみた。
「ふふふ。そうね。私はなんとなく分かるけど、これは杏には難しいかもね」
なんと!
当事者の私に分からないことが華ちゃんには分かるなんて。
「クスクスクス。大丈夫よ。杏が悪い訳じゃないわ。小早川君のただのやきもちよ」
やきもち?
どこでやきもちする場面があったのか。
分からなくて首をかしげてしまう。
「……華ちゃん。私たぶん人より気付きにくいのは、今まで色々経験してこなかったからですかね?」