俺様御曹司による地味子の正しい口説き方 ※SS集
でも、優ちゃんどうしたんだろう?
時計を見るとすでに10分前で。
大変!
急がないと。
恭一君とはここでお別れすることにして、申し訳ないけれど帰るときに又連絡するね、と話していたら私の携帯が着信を知らせた。
恭一君に断りをいれて携帯を取り出すと、心配していた優ちゃんで。
「もしもし?」
━「杏ちゃん?ごめーん!電車が遅れちゃって、そして迷っちゃって。18時ギリギリになりそうだから中に入ってて貰ってもいい?」
「えっ?本当?大丈夫?道分かる?」
━「うん。なんとかなりそう」
えへへ。と、苦笑いしながら迷っていたことを話す優ちゃんは相変わらずで、当時からよくいろんなところで迷子になっていたな、と笑うしかなかった。
気を付けてきてね、と電話を切ると恭一君と茜ちゃんが笑いながらお話していた。
何もないことは分かっていても、
ほんの少し、ほんの、すこーーーーしだけ、もやっとする。
茜ちゃんにやきもちだなんて。
いや、違うな。
私だけを見ていてほしい、だなんて。
私だけと話してほしい、だなんて。
私ってば、こんなに我儘だったんだな。
恭一君には知られたくない。
こんな独占欲。
嫌われたくないんだもん。