俺様御曹司による地味子の正しい口説き方 ※SS集

チラリと視線を向けて見据えた顔は、……確か経理の……誰だ?
うーん。
あぁ、田口さん。

あからさまにバツの悪い顔をして、視線をそらされた。

反らすくらいなら最初からやるなよな。

「恭一君!」

困り顔から一転して顔を綻ばせた杏。
俺を見てホッとするとか可愛すぎる。

「じゃ、じゃあごめんね。さっきの、忘れて」

そそくさと階段と逆方向のエレベーターに向けて帰っていった。
堂々と奪う勇気もないくせに手ぇ出すな。

「あ、はい。お疲れさまでした」

杏も律儀に挨拶を返して安堵のため息をつく。ほっとけよ、そんな奴。

「杏?休憩終わる、プリンそこの会議室で食べたら?今日は使わないだろ、そこ」

「うーん。そうですね、そうします」

せっかく二人なのに、わざわざ華さんや加藤のところに戻る必要なし!

給湯室にある小さな冷蔵庫から『笠原』と書かれたプリンを出す。
名前書くとか、なんなの堪んない。

二人で会議室に入って、杏がプリンを食べるのを隣に座って見てた。
食事って、見方を変えたらエロいよな。
やっと食べれたプリンを満面の笑みで口に運ぶ杏。俺がエロい事考えてるなんて、想像もしてないであろう無垢な笑顔に少しばかりの罪悪感。

エロくてごめんな。
思わず苦笑する。

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