俺様御曹司による地味子の正しい口説き方 ※SS集
相変わらず何処にいても注目を集める恭一君に今の状況を思いだし冷や汗が出る。
恥ずかしいっ。
思わず恭一君を掴んでいた手を離すと、代わりに手を握られた。
覗き込むようにふわりと笑いながら。
恥ずかしいけれど、握られた手をキュッと握り返しながらとにかく早く帰りたくて。
その手の温もりを掴んだ。
「ねぇ、あれ王子じゃない?」
「えっ?宮学園の王子!?」
「そうそう。宮学!」
遠くで聞こえる黄色い声に、杏は訊ねるように見上げた。
「宮学の王子って何ですか?」
「あーーー。高校の頃言われてたかも」
「恭一君の事ですか?」
恭一君は多分ね、と面倒臭そうに軽く頷く。
なるほど、恭一君ほどになると他校にまでその存在に一目おかれる事になるのか。
…………全く聞いたことは無かったけれど。
「こんばんは。笠原の彼氏って君の事?」
おっと、このまま忘れ去りたかった杉本から声が掛かった。
にこやかな笑顔を浮かべ近付いてくる杉本に逃げ出したい衝動に刈られ繋いだままだった手に思わず力が籠る。
「はい、そうですが?……杏、誰?」
「3年の時担任だった杉本先生」
教師であることが分かってか、恭一も軽く目を丸くして、『大丈夫』と言うように握り返してくれた。
「先生、ね。こんばんは」
目を細めて値踏みするような視線が互いを交差する。
「ね、ちょっと聞いていい?」
なんなんだ、この空気は。
とりあえず、早く杉本から離れたいと思ったいたのに、杉本から恭一に話しを振られそのまま会話が始まる雰囲気に無意識に眉がよる。
「何ですか?」
恭一も、ここに来た瞬間見た杏とこの杉本とか言う教師の光景と、杏のどこか不安そうな態度を感じて既に杉本は敵認定されていた。
だから不躾な態度をとってしまっても
……うん、仕方ないよな。