俺様御曹司による地味子の正しい口説き方 ※SS集
早々に。
俊敏に。
お願い恥ずかしすぎる!
「えっと、まぁそう言うことで。失礼します?」
何とも締まらない台詞を発した恭一君を引っ張って、逃げ出すようにその場を離れた。
帰り際、茜ちゃんと優ちゃんは楽しそうに手を振ってくれたから、声を交わす事が出来なかったけれど、帰るという意思表示は伝わったようだったから良しとしよう。
慌てて店から出て、そのまま恭一君を引っ張って歩き出すと、恭一君に引っ張られて腕の中に囲われたと思ったら「杏、車こっち」そう耳元でささやかれた。
いつもなら、こんな街中で恥ずかしすぎると身をよじるけど、いつのまにか張り詰めていた気持ちが解れていくのが分かってそのまま腕のなかに身を任せた。
やっと安心して小さなため息がもれる。
「お疲れ。楽しかった?」
ゆっくりと腕の中から解放されて優しく手を繋ぎ、促されるように歩き出した。
車はすぐ近くに止めてあるみたいだ。
「はい。優ちゃんと茜ちゃんと凄く楽しかったです!社会人にもなって、少しは大人になったつもりでいたけど、あの二人に会うとなんとなく学生に戻っちゃう」
「ははっ、同級生ってそんなもんじゃない?楽しかったなら良かった」
「はい!」
「で?何?あの教師」
「うえっ!?」
「口説かれてたよね?」
「そ、そんな筈は……」
「手なんて捕まれちゃってるし」
「━━━━ごめんなさい」
私としては何がどうなってあんなことになってしまったのか皆目検討もつかないが、あの場で恭一君が来てくれて本当に良かったと改めて感謝した。