俺様御曹司による地味子の正しい口説き方 ※SS集
甘い匂いは杏限定で


「あれ、水守じゃね?」


結局最後まで付き合わされて、終電間際の駅に向かう途中隣にいた佐藤が声を出した。

ふいに視線を向けるとキヨの他に2つの影。

暗くてはっきり見えないが、二人という人数と何となくの背格好から嫌な予感。
今日は華さんとご飯に行くとは言ってたけど、キヨも……?

でも、ありえない話じゃない。



「はぁーあいつ相変わらず目立ってんなぁ」
「だな、中身を知ってっからあれだけど、一回お願いしてみてえよな」
「なぁなぁ、小早川一回くらいあるだろ?」


好き勝手言ってる奴等に嫌気がさす。
「あほか。キヨとはマジで何もねぇよ」


「マジでー」
「んっ?なぁ水守と一緒にいる子可愛くね?」
「やっぱなー可愛い子には可愛いツレがいるんだよな」
「なぁ、小早川声かけてくれよ」
「水守はお前にやるからさ、あの友達紹介してほしい」


いらねーよ!なんて毒づきながらも視線はキヨの隣にいる女たちへ。
チッ、なんでお前ら見えるんだよ、俺の位置からじゃ見えねぇんだよ。

その時、キヨたちの横をタクシーが横切った。

タクシーのライトに照らされてはっきり見えたその顔はやっぱり思い描いたあの子で。


「うわっ、レベル高っ!」
「なぁなぁ声かけてくれよー」
「あれ?あの子……なぁ、小早川ー笠原さんじゃね?━━━━━って、おーい!」


杏と分かった瞬間、俺の体は動き出していて。脊髄反射っての?
磁石の引力みたいに引き寄せられるんだ。

後ろから俺を呼ぶ声がするけれど、返事なんてしてる暇はない。
いいじゃねぇか、声かけてほしかったんだろ?
付いてこいよ。


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