俺様御曹司による地味子の正しい口説き方 ※SS集


既に小走りから本気走りに変わっていって「杏!」と声をかけながら腕を引き寄せて腕の中に閉じ込めた。


「ひゃぁぁぁぁぁぁ…………あれ?恭一君?」

「杏、会いたかった」

「いやいやいやいや、今日会社で会ってますよね!?」

「あーーー杏の匂いだ」

「ふぇっ?ちょっ、きゃっ、な、何するんですか!」

目を白黒させながらも慌てて腕から抜け出そうともがく杏をがっちり抱え込んで、その小さな頭に顔を寄せる。
あー落ち着く。
鼻をすり寄らせながらくんくんと匂いを堪能する。


「げっ、恭一。ちょっと!離れなさいよ!道端でセクハラしてんじゃないわよ!」


うっせーよ!


「なんだか犬みたいな嗅覚ね、小早川君。杏にGPSでも付けてる?」


やっぱり付けるか、GPS。
必要だよな。


「おいーいきなり走るなよ」
「うわぁ、これか。すげぇな溺愛っての?」
「見慣れねぇな、こんな小早川。あっ、久しぶり笠原」
「おぉーマジだ。可愛いーーーー」



「久しぶりです…………?」

少し前に会った筈の同級生の顔はなんとなく見覚えはあっても、名前までは思い出せない様で、頭をフル回転させて考えているような表情の杏が可愛すぎて。


「うわーマジ?忘れられた?さ━━━」


佐藤だよ。と、恐らく続くはずだった佐藤の言葉に被せながら、「ん、いい覚えなくて」と杏の視界すら奪うように抱き寄せた。


「小早川がうぜぇ」
「久しぶりー水守。小早川の彼女と知り合いなんだな」
「うっわーーーお姉さん綺麗っすねー」
「俺ら小早川の友達っす」

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