俺様御曹司による地味子の正しい口説き方 ※SS集
やいやい始まる会話を後目に杏と逃亡するべくしっかり手を握る。
「華さん、今日はもうお開きですよね?」
「えっ?えぇこんな時間だし帰る途中よ」
「ちょっと恭一!私にも聞きなさいよ!」
「じゃあ、杏は貰います!帰るぞ杏」
「はぁぁぁぁ????何勝手言ってんのよ!」
「あらそう?じゃあ宜しくね」
「さ、行くよ?じゃあな、俺帰るから」
杏に口を挟む暇さえなくして歩き出した。
これ以上杏の顔をあいつらに見せてたまるか。
「たまには杏ちゃんを貸しなさいよーー!」
早足で距離をとる後ろからキヨの怒る声が聞こえるが、知ったことか。
あわてふためく杏は
「華ちゃん。キヨさぁぁぁぁぁん、ごめんなさぁぁぁぁぁい」
なんて音響効果抜群のキレある響きを見せる。
コラコラ、深夜に迷惑だぞ。
散々あいつらに杏の話をさせられたから、会いたくて堪らなくなったところに杏を見つけて我慢なんて出来るわけないだろ。
あぁ、なんでこんなにいい匂いしてんだろ。
残念なのは、俺限定じゃないってことで。
甘い蜜の香りは飢えた狼どもがひっきりなしに寄ってくる。
だけど、俺が気づくのは杏限定で。
杏の蜜しか気付かないし欲しくない。
犬でも何でもいいんだよ。
帰巣本能で向かう先は杏の元だ。
早く帰る場所が同じになりますように。
【完】
「あの犬なら躾が必要だろうよ」
「暴走しまくりだな」
「どっちに躾がいるってゆうのよ?」
「そりゃ小早川だろうよ」
「だな」
問題は誰も躾たがらないって事で。
残された面々が心底面倒臭い男、小早川の変わりようにため息を着いたのは、内緒。
【本当に・完】