斜め上の彼女
覚悟はできていた。
大きな窓から見えるライトアップされた日本庭園が素敵だとか
和を基調とした洋をほどよくミックスした洗練されたお部屋だとか
折角の京都でも指折りのラグジュアリーホテルを堪能する余裕なんて全く無かった。
キングサイズのベッドの上
酔って穏やかな寝息をたてる男の腰を跨ぎ、膝立ちをする女。
課長、すみません。
心の中で何百回目かの謝罪をする。
わたしの実家は小さな酒蔵で、小さな頃からアルコールの香りの中で育ってきたせいか、酔い潰れたこともなければ二日酔いもしたことありません。
今日、やっとの思いで仕上げた大きなプロジェクト。
課長は多分、2、3日は殆ど寝てませんよね?
呼び出したホテルのバーで、貴方を沈めることなんて簡単でした。
33歳、もう中年の入口だよといつも笑いますけれど、こうやって上から見下ろす貴方はどこにも弛みなんてなくて。
恐る恐る、頬のラインを指でなぞってみる。
薄くも厚くもない形の良い唇、切れ長の瞳、高い鼻梁。それぞれ美しいパーツが品よく配置されていて、いくらでも眺めていられる。
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