斜め上の彼女
わたしのしようとしていることは、おそらく犯罪。
バーで酔わせて正体をなくした貴方をホテルの部屋に連れ込んだ。
恋を諦める為に。
一瞬だけ貴方をわたしのものにするために。
ボタンを全て外し終わると、ベルトのバックルに手をかける。
流石に指先が冷えて震えてきた。
上手く金具を外せない。
「・・・・・手伝おうか?」
頭の上から不意にかけられた声にさっきから煩く騒いでいた鼓動が止まった。
ゆっくりと顔を上げると、髪をかきあげながら身体を起こしかけた課長と視線が絡む。
広いベッドの上、腰が抜けたようにお尻を落とした。
「なに?オレ襲われてんの?」
どうしよう、どうしよう、あんなに飲ませたのに!
「やけに酒を飲まされて、気がついたらホテルの部屋に連れ込まれてるとかフツーに考えたら危険なシチュエーションな訳やけど」
課長がボタンの開けられた自分のシャツに目を落とす。
刹那、身体が固まるけれどすぐに傍らに放り投げていた自分のバッグを引き寄せて中から用意していた封筒を取り出して課長に差し出し頭を下げた。