君と出会わなければ
「あ、ありがとう」
アタシはヘルメットを取って、アヤトに渡す。
アヤトはそれを受け取り、ケツ下にしまうと、すぐにエンジンをかけた。
「え、もう行くの?」
━━━シーン...
アタシの一言でエンジンが止まる。
「なに?まだいたいって?(笑)うそ、じょーだん!もう遅いし、今日は解散!」
「わかった...」
なぜかわからないけど、寂しかった。
今日初めて会ったアヤト。
腹立つぐらいふてこかった奴がここまで優しいやつだったとか、ついていけなさすぎて調子狂うわ。
━━━グシャグシャ
アヤトはアタシのヘルメットでペチャンコになった髪の毛を、おもっきりぐちゃぐちゃにして、子供みたいな顔で笑った。
こんなかわいい顔すんのかよ...反則。
「今日朝、ぶつかっちゃってごめんな?んな、またあした!」
━━━ブォォォォン...
そう言い残すと、バイクはみるみる遠くなっていった。
まばたきしたら、消えてしまいそうで、アタシはなぜかまばたきせずに見ていた。
「はー、なんか今日はいろいろ疲れたな」
アタシは混乱する気持ちと高校初日でヘトヘトでぐっすり眠りについた。