君と出会わなければ

戸惑い



━━━ピピピピッ...ピピピッ...


「んーーーーー...あー、眠た」


頭に嫌味に響く目覚ましに叩き起こされて、重たいからだをゆっくりベッドから離す。


「おはよー...」


「あー、おはよ!学校初日は、どうやった?」


朝のテレビ番組を見ながら聞いてきたのはお母さん。
んまぁ、アタシはままって呼んでるけど(笑)
ままとは、友達みたいなめっちゃいい関係の親子だと思う。
恋愛のことはなんでも相談できるし、長く生きてるからいいアドバイスもなかなかくれるしね。


「行ってきまーす」


「いってらっしゃい!てか、ルナ、今日ごみ捨てにいったとき、自転車なかったけど、どうやって帰ってきたん?それと、あんた今日どないして学校行くんや?笑」


だぁぁぁあああ!!!!
自転車ないこと頭から綺麗に抜けてた(´Д`)
バスで行ってももう間に合わないしな...


「んま、とりあえずダッシュで行くわ!じゃね!」


アタシはそう言うと、わざと走るふりをして家を出た。


━━━プルルルル...


『はいはーい♪ルナー!ひさびさ!どした?』


『今日入学して早々、学校行く気なくなっちゃってさー。アンナが空いてたら今日遊ぼー!』


『え、いいよいいよ!んじゃ、駅前集合で♪』


アタシは携帯を開いてすぐに、アンナに電話をかけた。
アンナはアタシにとって、一番大事な友達。
中1のときは、くそがつくほど仲が悪くて(笑)
二人でいじめ合いを繰り返していた。
でも、ある日を境にもうやめよってなって。お互いのいいとこ悪いところ、ちゃんと向き合ってみればいっぱいあって。
それで今、こんだけ仲良くなれてる。
他のやつらはみんなうわべだけで、ぺーらぺらだったから、自ら関係を切ったんだよね~。


「アンナ会いたかった~」


アタシはアンナを見つけて、走って飛び付いた。
アンナもアタシをぎゅーっと抱きしめてくれる。


「ルナその格好なに?!」


アンナはアタシの姿を上から下まで全身見たあとに、ポカンとした顔でそう言った。
なに?って普通じゃない?黒のスキニーにパーカーだけど?
ほぼノーメイクの何が悪い?


「学校行くつもりだったからこんな感じやけど??」


「いやいやいやいや、ルナ。それない。私服OKなんでしょ?それなら、もっとメイクちゃんとして、もっと可愛くしていきなよ!アタシは通信だからルナみたいに登校日数は多くないけど...男子に可愛く見られたいでしょ?!」


異性の目とか気にしてもなかったけど...
んま、たしかに新しい学校生活始まったばっかりだし、気抜いてたら、彼氏もできないしなー。
服装は手抜いてるだけだから、どうにかできるけど、メイクがどうもいつもと変えるの苦手だなー。(´Д`)


「ルナ!このカラコンとかルナの感じに合ってる!」


アタシはアンナに、電車を乗り継ぎ都会の方まで連れてこられ、カラコンとか化粧道具を物色していた。


「よし!じゃあ、するよ!まずカラコンね!指で、目大きくあけて!そのまま落ち着いてカラコン目の中に置くだけね!」


アンナはアタシの人差し指の上に、明るめの茶色のカラコンを置いた。
そんな簡単につくわけないでしょーに。
何回も挑戦したんですけど、アタシ。


「入ったー!!!え、意外に簡単?!うわー、別世界だわ。目ん玉」


「別世界って(笑)じゃあ、次はベースメイクとアイメイクね!あー...でも、ルナ、肌綺麗だからコンシーラーだけでいいや!」


アンナは慣れた手つきで、アタシの顔にいろんなものを塗っていく。
アンナは塗るものの名前とどこに使うのか。
あと、どんな風に塗れば良いのかを超がつくほど、丁寧にアタシに教えてくれた。
鏡の中のアタシはみるみる変わっていって、それを見ているのが楽しかった。


「できたー♡やっぱルナきれい♪ルナ、パーツパーツが整ってるからメイクしやすい♪」


完成したアタシの顔は、自分で言うのもなんだけど、むちゃくちゃ綺麗になっていた。
綺麗になった自分を見たら、いつもより少し早起きして、ちゃんとメイクしてから、学校に行こうと思った。

あー...超薄い顔で学校行ってた自分を憎むわ...


「ほんまにありがとう♪さすがアンナ天才。てかさ、聞いてほしい話あるんだよねー。」


アンナは使った化粧品を綺麗にまとめて袋に入れたあと、あらたまってアタシのほうを見た。
アタシは昨日、新しい友達ができたこと。
金髪野郎にぶつかられたこと。
カズキと友達になったこと。
携帯を無くして学校に戻ったらまさかの鍵かけられて、閉じ込められたこと。
そしたら、朝の金髪野郎が助けにきてくれたこと。
バイクで家まで送ってくれたこと。

とにかく0から100まで全て話した。


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