君と出会わなければ
━━━チッ...チッ...
誰もいない静かな教室の中には、時計の音だけが虚しく響いた。
「おーい、藍沢!今日は早く閉めるから出てくれるか?」
「あ、すいません」
カズキと電話のあと、担任が教室を閉めに来て、アタシは荷物をまとめて、下駄箱に向かう。
「ルナ!!!!!」
━━━ビクッ!!!
下駄箱に着いた瞬間、鼓膜にキーンと響くぐらい大きな声で叫んだのは、カズキだった。
びっくりしすぎて思考停止するアタシ ( Д )
「あー!ギリギリ間に合った!!勝手に電話切るなよ!何回かけても無視するし!俺のことちょっとはなぐさめろよな!」
カズキの電話を切ったあと、マナーモードにしてたから、なんにも気づかなかった。
携帯を見ると5件もカズキからの着信が入っていた。
「どんだけ慰めてほしかったわけ~」
「ルナが元気なかったから心配して来てやったんだろ!!もういい!俺帰る!!」
カズキはそう言うと、アタシに背を向けて、どんどん遠ざかっていく。
え、ちょっ、ちょっと待って!
慰めてあげるから、アタシのことも慰めて(T-T)
「ちょ、ちょっとまっ!!!」
━━━ズリッ
下駄箱を出たすぐ前に階段があることを忘れていたアタシは、おもいっきり踏み外し、ひざをアスファルトで擦りむいた。
膝は傷だらけで、血がだらだらと流れ出していた。
「い、いったー...」
「お、おい!大丈夫か!手当てするから!歩ける?」
カズキはこけたアタシを見て、大慌てで帰ってくると、アタシの肩を優しく支える。
━━━ズキッ
「いたっ!!!!やっぱムリ。ズキズキしすぎて立てない」
傷が深かったのか、血がどんどんと溢れ出して、破れたスキニーは血の色でどんどん染まっていく。
「よいしょっ!これならいける?俺んちここから、すぐだから、もうちょっと我慢してな」
そう言うとカズキは、アタシの体を軽々持ち上げて、お姫様抱っこをする。
あーーーーまただ。またお姫様抱っこだ。
こんな状態でどれぐらい歩くつもり?!
恥ずかしいムリやだーーーー!!!!!!
「おいおい!暴れんなって!」
「恥ずかしいもん!!!下ろせ!!!」