君と出会わなければ
「俺、カナエは好き。でも、それ以上にならない」
沈黙を破ったのはアヤトだった。
アタシはその言葉の意味をいまいち理解できないでいた。
好きだけどそれ以上にならないって??
好き以上ってなに?
「カナエとは、付き合って3ヶ月経つけど、俺、カナエと付き合う前から気になってるやつがいた。でも、そいつとは今までのつきあい方じゃなくて、ゆっくり時間かけてお互いのこと知ってから告白したいっておもってた」
アヤトはゆっくりと自分の気持ちを話す。
「俺、ルナと学校で二人になったときからなんか、今までと違う感情ってゆーか...なんか俺もわかんねぇんだけど!!!俺ルナのことずっと気になってた!」
いやいや、もう話が急展開すぎるでしょ。
「いやいや、待ってよ、ついていけないし...じゃあなんでカナエと付き合ったん?」
「分かってる。矛盾しまくりだって。でも、これだけは、言っとく。俺ルナと今キスしたこと後悔してないから」
アヤトはそう言うと、ベランダから部屋に戻った。
一人になったアタシは、雲ひとつない夜空を見上げて考える。
アタシだってアヤトのこと気になってた。
でも、カズキと付き合ってから、その感情はどんどん薄れていったし。
それに、今はカズキが好き。
「ふー!!!!」
アタシは少し冷たい空気を肺に、目一杯吸い込んで、おもっきり、吐きだした。