君と出会わなければ
「あ、で、なんだっけ?名前?名前はカナエから聞いたよ!聞いたって言うか、勝手に言うてきたって言うか...てか、そっちだってアタシの名前なんでしってんのよ!」
「あー、カナエちゃんね、あの子むちゃくちゃ元気いっぱいだよね。俺はカズキがルナちゃんのこと話すからそれで」
アタシとアヤトは、時間を忘れて教室で話していた。
気がつけば夜の21時を回っていた。
「うわ!やば!早く帰らないと...」
「俺バイクで送ってくわ、家どこ?」
アヤトは右手でカギを握りしめて、そうアタシに言った。
たしかにアタシは地元もここじゃないから、自転車で片道一時間はかかる距離。
送ってもらえるってなったら、そら、早く帰れるし、楽チンだけど...
アタシの頭の中にはカナエの言葉が残っていた。
カナエちょっと、アヤトのこと狙ってるっぽかったしな...
「い、いやいいよ!自転車あるし!」
「自転車なんか、学校置いとけばよくね?」
「ダイエットもかねて自転車こぎたいし!」
「別に太ってなくね?」
「あ、え、えーと...」
「もういいから、立って送るから」
━━━ギュッ
アヤトはアタシの腕をつかんで、立たせるとそのまま、教室を出てアヤトの家の前まで強引につれていかれた。