新年の幕開けはきみと

私・吉岡裕香(ﾖｼｵｶ ﾕｶ)、24才。
短大卒業後、この会社に入って4年目。
第一営業部で、営業事務をやっている。
主に、先ほど仕事を頼まれた坂井さんの事務を担当している。

坂井智也(ｻｶｲ ﾄﾓﾔ)さんは、2年先輩の28才。
大卒の彼は現在6年目で、営業部のエースと言われている。

そんな彼の事務担当になって3年以上。
それと同じ年月だけ、私は彼に片思いをしている。

私が入社したときから、坂井さんには彼女がいた。
秘書課の鈴木かおり(ｽｽﾞｷ ｶｵﾘ)さん。
坂井さんと同期入社で、2人並ぶと美男美女のカップルだ。

私が坂井さんの隣に並べるとは思わない。
こうして彼の事務担当として側にいられるたけで幸せだ。



｢じゃあ吉岡。行って来るから後、頼んだよ｣

｢分かりました。行ってらっしゃい｣

時間になり、坂井さんは営業に出掛ける。
彼が他の営業さんと違うのは、こうして私個人に声をかけてくれること。
他の営業さんは、事務所の入り口で挨拶するだけで、事務員さんに言葉をかけることなく出掛けるらしい。

これは、同じ第一営業部事務で親友の広瀬麻美(ﾋﾛｾ ｱｻﾐ)から聞いたことだ。