キンダーガーテン    ~温かい居場所に~
「えっ⁉また先生??今日は佐伯先生の日でしょう?
…あぁ~。また遅刻かぁ…」

「あっ…いぇ…。その…。…はい…。」

「ねぇ~先生…………
園庭掃除や小型バスも変わってたよねぇ?」


ハァ…。


深いため息を吐いて、イライラオーラを滲ませる。


今までにも何度か怒られたけど…

今日の声は、比べ物にならないくらい低くて恐い。


えっと…。何が不味かったのかな?

記憶力の良い先生は、ここ数回代わってる他の当番まで頭に入っているみたいだし…。

もしかして、梓ちゃんの遅刻って…目立ち過ぎ?

降りたら伝えて、当分無しにしないとね。

とりあえず、今日はメチャメチャ不機嫌な日だから…

失敗しないように気をつけないと‼


気合いを入れて、次のバス停のチェックを念入りにしていたら

「先生が悪いよ!
いつもニコニコ…言いなりになってばかり。
………佐伯先生の為になってないよ!
人に気を使ってばかりで……………。
損してるって思わない!!」って厳しい声が続いてた。


「はい…。…すみません…。」

誤ってるけど…何に怒られたんだろう…。


それよりも…泣きそう…。


後もう一声聞いたら、涙が落ちるって思ったところで園に着いた。

良かったぁ~。泣かずに済んだ…。

ほっとしてバスを降りようとしたら


「あぁ~。…ごめん。言い過ぎた。
…………別に怒ってないから…。
まぁ…ちょっとは腹が立つけど…。
何でこの子ばっかり?何をニコニコしてんだ!って…。
でも、先生そのものには怒ってないから。
気にしないで………。」

少しだけ穏やかになった先生の声が聞こえた。


…………………………………。

きっと、イライラさせちゃったんだ。

梓ちゃんの代わりに唯が乗った…ってだけでも嫌なのに。

ヘラヘラしながら毎回代わって、役に立ててるつもりになって。

「………………すみませんでした。」

もう一度誤って、子供たちと一緒にバスを降りようとしたら。

「あっ!………………。」って

振り向くと、何か言いたそうな先生の視線とぶつかった。

戸惑う私に一瞬、間が空いて…


「……………お疲れ様。」って

いつもと同じ挨拶で、先生が先に降りて行った。


何か言いたかったのかな?って思ったけど…これ以上注意されると心が萎えちゃうから

気づかないふりして、私もバスを降りたの。




…………それから数日。

先生の視線を感じることもあったけど………

特に話し掛けられることもなく過ぎていった。

ただ、梓ちゃんには先生から注意があったみたいで

「"バスに遅れないように来なさい‼"って言われちゃったぁ~。当分頑張って来ないと…
あぁ~あ!しんどいなぁ~唯ちゃんもごめんね!」って反省の薄いコメントをもらったの。

梓ちゃんくらい前向きだと、人生楽しそう。




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