キンダーガーテン    ~温かい居場所に~
快晴の空の下

リュックを重そうに背負って、登園してくる子供たち。

いつもは生意気な年長組の男の子達も、お母さんに手を引かれて歩いて来てる。

「せんせいおはようございます。」

「おはよう。良い天気で良かったね。今日はお母さんと一緒だから、嬉しいね。」

門の所で子供たちに声を掛けていたら


「先生、ちょっと良い?」と森先生に呼ばれた。

「はい。」

バスの後ろ側に手招きされて、慌てて向かう。


まさか‼もう失敗したの⁉…

まだ、出発もしてないのに…。ドキドキすると、変な汗まで出るみたい‼

今日は頑張らないと!!って…あんなに何度もチェックしたのに…



自分が情けなくなって、落ち込んでいたら表情に出てたみたい。

「大丈夫??…泣きそうだよ。」

「あっ、もう失敗したのかと思うと情けなくて…」

俯く私に

「あっ⁉ごめん!別に失敗はしてないよ‼
この後保護者が増えて忙しくなるだろうから、最終チェックをしておこうと思って。
誤解させてごめんね。
今日の流れは、メモに書いてきたよね?持ってる?」

ポケットから出すと

「よし!もう一度言うから目で追ってね。
先ずバスに全員が乗ったら点呼。
その後、帰りのバス停のアンケートを書いてもらってね。
帰りは、園バスのバス停と止まる所が違うからどこで何人降りるかしっかりチェックして。
動物園に着いたら写真撮影。入り口でクラス写真を撮るからね。
年少さんは待てない子供が多いから、揃ったら直ぐに撮ってもらうこと。
オレに声を掛けたらいいから、遠慮しないで!
ゾウの所で解散。
帰りのバスの時間は必ず時間厳守して下さいって言うこと!
一人でも遅れるとバスが出発できないから、皆に迷惑を掛けるからって。
これだけ出来たら後は楽しむだけだから、頑張って!
不安になったら、いつでもオレに声を掛けてくれたらいいからね。」

それだけ話すと走って行ってしまった。


観光バスの運転手さんとの打ち合わせや荷物の準備、館内の行動を園長先生と話したりと

大忙しの先生。

バスが出発するまで一度も立ち止まることなく仕事をこなしていた…


"保護者が増えたら、忙しくなるだろうから"って私を気遣って言ってくれたけど…

本当に忙しいのは先生の方。

それなのに、時間を取って前もってフォローしてくれて…

先生は、どうしてそんなにしてくれるんだろう?


失敗すると、後のフォローが大変だから?

でも…私が失敗しても、先生は直接困らないよね??

まぁ…尻拭いの仕事は増えちゃうけど…。


分からない事がいっぱいで…何だか心がモヤモヤするなぁ。

頭がパンクしないか心配。


あぁ~ダメだぁ~。

今は、お仕事が一番‼頭を切り替えて!

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