キンダーガーテン    ~温かい居場所に~
その後も沢山の人と可愛い子供たちに支えられて

運動会・お遊戯会も無事に終えることが出来た。



そうして、いよいよ今年最後の12月に。

残すは、クリスマス・お餅つき・個人懇談。

個人懇談はドキドキするものの…クリスマスとお餅つきは保護者がいないから少し気が楽。

こう思えるのも、大きな行事が二つ済んだからだよね。

少しほっとしたのも束の間…

またまた大きな事件が発生しちゃった‼

事の起こりは、小型バスの当番の時。

森先生と違って、小型バスの一人…佐藤先生はかなりのオジサン。

たぶん、50代だと思うんだ。

そのせいか、四人は嫌うんだけど…私は緊張しないですむから楽チンな当番。

お喋りなオジサンで、スケベなのがこまりものだけど…適当に相槌を打っていたら

時間が過ぎてるの。

この日も好きな女の子のタイプとか、先生達のスタイルについて

一人であれこれ、話してたんだけど…

「ねぇ~唯ちゃん。何カップ?ねぇ~ねぇ~」って…

唯ちゃん!…ってびっくりしてたら

「次の当番の時にブラをプレゼントするから教えて。」って‼

「教えませんよ~。それに唯ちゃんって‼仕事中ですよ。」って言ったんだけど……

ニヤニヤするばかりで。

それからは

顔を見ると近づいて来て「教えて」って聞いて来る。

からかわれてるんだろうけど…ホントに困るし…怖い…。

ついバスの駐車場を避けて通ったり、バスが着くと逃げてしまう。

でもまた当番は回ってくるから…逃げても解決しないんだけどね。

ため息も増えてて…

とうとう大型バスの当番の時、先生に

「先生~。何か悩み事?」って聞かれちゃったんだよね。

カンの良い先生には、何でも直ぐにばれちゃうから…

いつか聞かれるのかなぁ?って思ってたんだけどね。

一応「何でもないです。」ってごまかした。

だって…こんな話し…やっぱりマズイもんね。

1歩間違えたら、セクハラだよ。

別に佐藤先生を庇う訳じゃないんだけど…

先生って佐藤先生の上司になるから…大事になっちゃうもん。

でも、カンの良い先生をごまかすことはできなくて

「この間から佐藤先生と親しいみたいだけど…オレの見る限り
先生は嫌そうなんだよね。…どう?」って…

先生ってホントよく見てるなぁ~。

これ以上隠すことは無理だから、諦めて全てを話した。

ミラー越しの顔がみるみる怒って…ホントに怖い。

「オレが話す‼」って言われ、いつもなら「はい。」って答えるんだけど…

こんな怒った顔を見たら、大問題になりそうで

「あの…佐藤先生も本気ではないと思うので…あの…無視します。」って言うと

「先生、何で佐藤先生を庇うの?」って…すっごく怖い声。

「あっ、あの…庇うなんて。えっと…」

「ねぇ先生。先生がそうやってニコニコ笑ってやり過ごすから…漬け込まれるんだよ!
されてること分かってる?セクハラだよ!!
危機感が無さすぎ!嫌なことは嫌って言いなさい‼
…………………それが無理なら、オレが言う。」って

梓ちゃんの当番を代わった時と同じことを言われた。

…でも、今回はもっと怖くて…。

ダメだって思うのに…涙が溢れる。

先生はチラッとミラーを見て、バスを路肩に止めてくれた。

バスの中は重たい沈黙。

「………ねぇ、先生。なんでそんなに庇うの?先生は困ってるんでしょ?
オレには先生がわからないよ……。」

先生は優しいから助けようと怒ってくれてる。

怖いけど…きちんと自分の気持ちを伝えないと…。

泣きながらだから、言葉は出にくく聞こえにくいかもしれないけど…

今思ってることを一生懸命伝えた。

"先生は佐藤先生の上司だから、先生に注意されたら園に居ずらくなってしまう。

佐藤先生には、奥さんと小さい子どもがいるのに…男の人が仕事を無くすと

大変なことになりかねない。だから、今回は見守ってて欲しい"って…

先生は随分黙ったまま考えてた。

先生に安心して欲しいから

"もう一度言われたら「これ以上しつこくされたら、上の先生に相談します。」って

言います"って伝えたら、やっと笑ってくれて

「もしそれでもダメなら…オレに言って。力になるから。
先生が困ることはしないから安心して頼って。」って

それから数日。

とにかく毎日揉めないようにって祈りながら過ごしていたら

「ご飯に行くよ‼」って夏苗ちゃんにびっくりする誘いを受けた。

…………………と、いうのも。

五人のメンバーと先生、それに小型バスの先生二人。

小型バスの一人って…佐藤先生だよ‼

親睦を深めるために一緒にご飯を食べるんだって…

ええっ⁉ホント…??

だって…先生は、佐藤先生のことあんなに怒ってたんだよ!

聞いた時は、とにかく不思議で…びっくりしたけど…

きっと大人の先生が、私を信じて佐藤先生ともう一度上手くやっていこうと

思ってくれたんだろうなぁって思って…

快く参加したの。

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