キンダーガーテン    ~温かい居場所に~
当日は居酒屋さんに集合。

遅刻魔の梓ちゃんがまだだから、みんなで待ってたら

先生たちが先に到着。

「唯ちゃん悪いけど…アズを待っててもらって良い?私達先に入って
先生たちの案内をしてくるから。」って
彩ちゃんに言われて一人待つことに…。

10分遅れて梓ちゃんが到着。

「ゴメンね、唯ちゃん。じゃあ入ろう‼」って

さっさと入り海晴ちゃんの横に座ってしまった。

…空いてる席は…



戸惑っていたら

「唯ちゃん、ここにおいでよ!」って佐藤先生の呼ぶ声が…。

ええっ⁉って焦ってたら

「ここ空いてるよ。」って先生の隣を教えてくれた。

佐藤先生の隣と森先生の隣しか空いてないみたいで…

先生の横に座ったの。

でも、不思議なんだよね。

いつもは、すっごく世話焼きの四人が

私をほって先に座ることなんてないのに…。

私のテーブルは、隣が先生で向かいが夏苗ちゃんと彩ちゃん。

モタモタしてたら、私用にカルピスを注文してくれてたみたいで…

乾杯になった。

やっぱり世話焼きは健在だから…思い過ごしかなぁ?

結局、佐藤先生の隣だけが空いた形になっちゃった。

悪かったかな?って見てたら

「気になる?行っても良いけど…助けられないよ。」って…

先生、意地悪だなぁ~

困って…先生の方をチラッと見たら…

クスッって笑われた。

うぅ~。佐藤先生ネタは勘弁して欲しいなぁ。

「アルコールは飲まないの?カルピス?」

話題を替えてくれた先生に甘えて、その話題に乗っちゃった。

だって…佐藤先生の話しを彩ちゃんと夏苗ちゃんに聞かれたら

大騒ぎになっちゃうんだもん。

「苦味は苦手で…」って答たら

「酎ハイやカクテルは?甘い物もあるよ。」

アルコールは飲んだことないけど…大丈夫かな?って考えてたら

「あぁ~ムリムリ!先生、この子はアルコールを飲んだことがないんだから。
炭酸も辛いって言うし…。今時、三才児でもコーラ飲むのに‼
オマケに偏食もスゴくて…果物も食べないからジュースも飲めないの。」って

唯が答る前に夏苗ちゃんが答えちゃった。

「それはまた…。らしいと言うか、お子ちゃまと言うか。」

「でしょう‼でも、それで唯ちゃんって気もするから可愛いの。」

「まぁそうだねぇ。」って…唯を肴にみんなで楽しんでる。

いじけてカルピスを飲んでたら

「だから、このお嬢様が食べやすいように家食なの。
外食だと毎回同じ物を食べて身体に良くないから。
夕ごはんにチョコパフェやパンケーキってありえないでしょう⁉」

「えぇっ!パフェとかパンケーキって…。
是非とも身体を考えて、まともな食事を摂らせて下さい‼」

変わらず唯のネタで笑ってるけど…いじけてる訳にいかない。

唯に合わせて家食!?

それでどんなに疲れていても、必ず彩ちゃんのおうちなんだ…。

申し訳なく思って固まっていたら…

「もう!!カナのお喋り!
唯ちゃん、気にすることないからねっ!」

「だって~。四人がこんなに大事にしてるって…知って欲しかったんだもん。」

「はいはい。
でもねっ!唯ちゃんが気にするでしょう?
ねぇ~唯ちゃん。唯ちゃんが気にしなくていいことなんだよ。
五人が一緒に楽しみたいからそうしてるの。それに、家で食べた方が安上がりでしょう?」

そう言ってくれる彩ちゃん。

それでもやっぱり…申し訳ないよう。

どう言ったら良いのか…迷っていたら

「先生はホントに愛されてるね。
四人はもちろん、上の先生や子ども達…。……オレも。
佐藤先生も??
とにかく皆、先生のことを構いたがるんだよね。
ほっとけないって言うかぁ~。ホントに不思議な子だよねぇ~。」

ってしみじみ言われちゃった。

「そうそれ!無条件に構いたくなるんだよね。
先生だし、一人でやれることも知ってるのに…
ホント、不思議だよねぇ。」

「たぶん、この天然がいいんだよね。癒しだもん。」

「ところで先生。何を、どさくさ混じりに告ってるの?海晴に怒られるよ!
まぁ本人はまったく気付いてないから良いけどね‼」

「やっぱり気付いてないんだよなぁ~。自分のことって思わないんだろうなぁ。」

「いやいや。その前に、怖い、嫌われてるって思ってるから…
告られるなんて頭にもないでしょう‼
先生、ファイト!!」

話しの内容は、よく分からないけど…

普段みない、少しほろ酔いの仕事仲間達。

スゴく新鮮で、自分も大人の仲間入りした気になる。

いつか私もアルコールが飲めるようになって、この雰囲気に

しっかり浸れるようになりたいなぁ~。

一人だけシラフだったことを、残念に思いながらも

楽しく過ごした帰り道。

方向が一緒の彩ちゃんや海晴ちゃんと帰っていたら…

「ねぇ~唯ちゃん。どうして今日、急に飲み会が開かれたか…知りたくない?」

「ちょっと、海晴!」

たしなめる彩ちゃんに

「い~の‼
別に口止めされた訳じゃないも~ん!
それに、密か過ぎて……可愛そうなんだもん。気付かれないのに…頑張ってて。
だから良いの‼」

話しの見えない私をほって、何やら二人で話し始めた。

「まぁ~。そうだよねぇ~。」彩ちゃんも納得したみたいで…

「それでねぇ~」ってまた話し始めた海晴ちゃん。

「表向きは"親睦を深めよう"なんだけど…実は、裏もあって~
"唯ちゃんのために作った飲み会"。
言い出しっぺは先生。この裏の事情は先生と四人だけが知ってるの。」

「私だけ内緒?」

「あぁ~違う違う。唯ちゃんだけ内緒って言うかぁ、佐藤先生に内緒って感じかな?
唯ちゃんには事後報告にしないと、すぐ顔に出ちゃうからねっ!
後は…先生のプライドの問題。まぁ~バラしちゃったけどね」

??……?…。

よく分からない説明に戸惑っていたら彩ちゃんが

「佐藤先生にセクハラされて、唯ちゃんが困ってるって…
先生に聞いたの。
あっ‼でもねっ、先生を怒らないでよ!
決して、口が軽い訳じゃないんだから。
……唯ちゃんって…すぐに顔に出ちゃうから…辛いんだって分かっちゃうの。
私達…心配で先生に相談してたけど…先生も分からないみたいで、困ってた。
そんな時、唯ちゃんがバスで先生に話したみたいだけど
私達には教えてもらえないままだったから…ヤキモキしてて。
先生は先生で…唯ちゃんと約束したから…佐藤先生に文句が言えなくて
解決法に悩んでたみたいだよ。
佐藤先生のエスカレートする行動に、イライラしてた時
この計画を思い付いて、私達に協力を頼んできたの。
だから、もし唯ちゃんが佐藤先生に文句を言うことを反対しなかったら…
この計画を頼る必要がないから…
唯ちゃんの秘密は、守られていたはずだよ。」

「そうだよ‼だから、先生を怒らないでね。先生は、唯ちゃんを守ろうとしたんだよ。
ホントは…自分一人で助けたかったはずだから…。
ただ、それだと唯ちゃんに聞いたって…佐藤先生にバレちゃうから
四人に話して皆で守ることにしたの。」

「今日も何度か、佐藤先生にセクハラされたでしょ?
ホントは…近づくことも、イライラするんだけど…
現行犯で見つけて、先生がビシッって言うのが一番だからって
皆で守りながら、ギリギリのラインを探してたの」

「先生の手がいつ出るかって…ヒヤヒヤもんだったよ!」

「親睦会だとお酒が入るから…
注意してもシリアスになりにくいでしょ?
だから…唯ちゃんとの約束が守れるって先生が言ってね。」

「途中、アズと海晴がトイレに誘ったでしょ?
実はあれも作戦だったの‼
三人が居ない間に注意しようって…
一応、私とカナは…先生が暴走しないようにお目付け役だったんだよ。」

「そうそれ!
でっ!結局先生はなんて言ったの!
唯ちゃんとトイレに行ってたから気になって~。」

海晴ちゃんの言葉に思わず前のめりになる。

「こっちで飲んでた時は、結構イライラしてたから…
大丈夫かな?って心配したんだけど。
やっぱり大人だよねぇ。
そんな顔はまったく見せないで、佐藤先生にビールをお酌に行って
"お疲れ様です。"って仕事の話しを少しして
"そう言えば、さっきから気になってたんですが…先生にスキンシップが多いですねぇ~
幼稚園は、若い先生が多いですし女性が沢山いるところなので
セクハラと言われないよう注意した方が良いですよ。
あまりベタベタしていると…仕事を無くしかねませんから。
特に唯先生はおとなしくて危なっかしいので、園長をはじめ主任や同期も気にして見ているので。
因みに、私もかなり目をかけているので。"って…
先生いわく
先に退職を促すと…案外辞めたくないって気持ちが働いて、危機感が生まれるんだって。
唯ちゃんの気持ちを考えて、辞めさせずに解決できる方法を取ったみたい。
まぁ~先生は、辞めさせても良いから…文句を言って…て言うか…怒鳴りたかったようだけどね。
相当イライラして、ホントに手が出そうだったもん。
でも、
そうしたら、唯ちゃんが自分を責めて傷つくから…我慢したんだろうね。」

「結局みんな、唯ちゃんに甘いからねっ!
泣かせたくないんだよ‼」

「特に先生はそうだろうね。
もう一度佐藤先生に近づける作戦を決めたことを、最後まで悔やんでたもん。
守りたいのに…いつも自分が一番、傷つけてしまうって…」

二人の話している姿を見ていたら…何とも言えない感情が溢れてきて

視界がだんだんボヤけてしまう。

「もぅ~!だから言ったらダメだって言ったのにぃ!
泣かしたのバレたら、先生に怒られるよ!
海晴の責任だからねぇ~。」

「ちょっと、彩だって賛成したでしょう?一人だけズルい‼
ねぇ~唯ちゃん。泣かないでよう‼
もう解決したんだから、怖くないでしょう⁉ねっ!」

違うのになぁ~。

不安で泣いてないのに。

この涙がうれし涙だって伝えたいのに、ドンドン流れるから話せない。

さっき先生が言ってた"愛されてる"って…このことだったんだね。

私のお願いを優先しながら守ろうとしてくれた先生。

それを協力してくれて一緒に守ってくれた四人。

大人の雰囲気にうっとりしていた時に…こんなことが起こってて

沢山の人に守られてたんだね。

もう…いくら感謝したって…したりないよぅ~。

「ありがとう…。」

「泣かないの。よしよし。」

「これでまた、安心して働けるねっ!
先生にも感謝するんだよ‼なんてったって、今回のヒーローなんだから。」

もちろん、ホントにスーパーマンだね。

いつも困った時には必ず助けに来てくれる。

……………。

気になって…当たり前だよね。

こんなに近くで見守ってもらって…

……………………。

もう…………認めないとね。

自分の気持ちに正直にならないと。

……先生のことが……好きだって……。

気になる人は、好きな人なんだよね。

前に彩ちゃんが教えてくれたこと……分かったよ。

「ねぇ唯ちゃん。
先生が唯ちゃんのことを大切に思ってくれてるのは…分かってる?」

「大切に扱ってもらってるのは…分かった。」

「そう、良かった。
唯ちゃんは、春からずっと…先生のことが怖いって言ってたでしょ?
でも、唯ちゃんが困った時一番に駆けつけて守ってくれるのは…先生だよね?
それでも…やっぱり、怖いだけ?」

違うって言っても……今、気づいたばかりだけど…

「あのね、さっきまで緊張するし苦手だって思ってたの。
佐藤先生の隣は絶対嫌だけど…先生の隣もためらって。
今も、怖いし緊張するけど…
春のように怖いだけの人って思ってないよ。優しいって分かってる。
ドライブに行った時、ドキドキしたから…あれっ?って思ったの…
さっきの話しを聞いて…」

「先生のことが…好きになったと!!」

横から言葉を取って、からかう海晴ちゃん。

「うん。」

「やったぁ‼
じゃあさぁ‼これからは一緒に、コイバナしようね!」

「片思いだから無理だよ。」って言うと

「ハイハイ」って頭を撫でられた。

なんだか楽しい‼
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