キンダーガーテン    ~温かい居場所に~
日曜日。

今日は、妹のヒロちゃんと二人でショッピング。

彼氏のプレゼント用のネクタイを…

"あ~でもない""こ~でもない"って、もう一時間近くも悩んでる。

今時の大学生って、普段ネクタイなんてするのかなぁ?

もしかして…就活?

妹の彼氏との年の差を気にしつつ、次は先生のマグカップ。

彼氏とは違って、先生のおつかい。

小学生みたいでちょっと恥ずかしいから、ヒロちゃんには服を見ててもらって

一人で買うことにしたの。

バレンタイン前のこの時期は、カップまでラブラブなペア物ばかり。

なんだか、一つ買うのって…勇気が要りそう。

気に入ったのは、海の似合う先生にぴったりの…少し深いブルーのカップ。

珈琲とお茶、どっちでも使えそうだから…お昼に調度良さそう。

少し厚みがあるのも、冷めにくくて良い感じ!

隣には、ペアではないけど…

色違いの白いカップが置いてあった。

気にしつつ、勝手にお揃いを買う勇気が出なくて…素通りしちゃった。

空の青と雲の白。

海の青と波の白。

一緒に合わせると、素敵だろうなぁ~って思いながら。

ヒロちゃんのところに行くと、セーターとスカートを買って

「遅い‼」って怒ってた。

ちょっと悩み過ぎたかなぁ?

「お茶しよう。奢るから!」ってカフェに向かおうとしたら

「あれ?プレゼント買ってる‼
ねぇ~彼氏っ??ねぇ~??」って紙袋を覗いてくる。

「あっ…仕事の人に…。みんなから…。代表で買いにきたの…」って誤魔化しちゃった。

「なんだぁ~。色気なぁ~い‼
だったら、もちろんチョコレートも付けるんでしょう?
私も後で買うから一緒に選ぼうね!」って…

「えっ!チョコレート⁉」

「そりゃ~。プレゼントってバレンタイン用でしょ?
義理チョコと渡すんじゃあないの?」

あっ…そうかぁ!

お礼と一緒に…チョコレートを付けても良いんだぁ~‼

告白とは違って、お礼のチョコだって思ってもらえるよね!

片思いの気持ちを気付かれずに、渡せるんだぁ。

「うん。ヒロちゃん、ありがとう。忘れてたぁ。一緒に選んでね!」

「ちょっと…忘れてたって…。危なっかしいお姉ちゃんにおつかいを頼むなんて…
幼稚園の先生達大丈夫??
メインのチョコを忘れるなんて…聞いたことないよう。」ってブツブツ言ってた。

ヒロちゃんに

先生の年齢、イメージ、お酒や甘いものの質問を受けながら…

チョコレートの特設会場へ。

そこは沢山の女の子でいっぱい。

「いくら義理でも相手が喜ぶ物にしないとね!せっかく代表を任されたんでしょ。
沢山あって選びにくいから、先にリサーチして絞らないとずっと悩むよ!」

そっかぁ~。

バレンタインなんて縁がなかったから、チョコレート一つ買うのに

こんなに大変だって知らなかった。

ヒロちゃんに助言してもらって、リキュールが入ったりナッツが飾ってあった

綺麗で美味しそうなトリュフにしたの。

ヒロちゃんのチョコも買って

"帰ろう"って言われて…頭に浮かんだのは、さっきの白いカップ。

先生とお揃いにしたいんじゃないよ!私が気に入ったんだもん。

誰に言う訳でもない言い訳を心の中で言って

さっき先生のカップを買った階に行ったの。

自分へのご褒美。

……………ただ、それだけ。



うちに帰って、白いカップにミルクティを入れてみた。

珈琲やココアと違って、紅茶には少し不似合いな厚手のカップ。

………それでも温かなぬくもりを与えてくれるこのカップは

先生みたいで…幸せな気持ちを届けてくれる。


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