キンダーガーテン ~温かい居場所に~
半年前に別れた朋君とは、一年続いた。
今までの中で一番長く続いた男の子。
出逢いは
幼児教育学科の運動会。
短大の子や他校の学生、近所の子供たちが自由に参加して良い行事。
幼稚園の先生になったつもりで行うんだけど
近所の子供たちは良いとして、大人相手になんて…
それも冷やかし半分の同年代の学生になんて、恥ずかしくって。
「は~い!みなさ~ん。次はかけっこですよぉ
風船を持っている先生の所まで一生懸命走って下さいねぇ。」
このイベントに何か意味があるのかな?
30年も続いた伝統行事らしいけど…
他校の男の子たちは、ニヤニヤ笑いながら「は~い」なんて返事してる。
…バカみたい…
そんな中で
「先生、どの色の風船をもらっても良いの?」なんて
真面目な声で質問してくる男の人。
変な人。
そう思いながら
「はい。良いですよ。」なんて答たら
パンッ!
ピストルが鳴って、皆が走り出した。
「どの子にもらう?」
「お姉さんは風船配らないの?」
笑いながら、歩く速度で走って行く。
風船を持つ女の子にしか興味がない会話をしながら
このあとの合コンに行く女の子の品定めをしているらしい。
真剣に走ってるのは…
子供たちと、さっきの男の人。
ピンクの風船を受け取ると、入場門に消えて行った。
ピンク?
わざわざ選んで?
しかも、退場門じゃなくて入場門?
変な人。
思わず気になって、目で追うと
「あっ‼」
入場門に飾ってあった風船が1つ割れていた。
子供のイタズラかなぁ~
割れていたのは…そう!ピンク。
もしかして、これを直す為?
私たちですら気づかなかったのに。
やっぱり変な人だなぁ~って見てたら。
目が合っちゃった‼
イタズラが見つかったみたいに笑って
「オレも先生を目指してるんだ。小学校だけどね。
これって良いイベントだよね。一瞬で童心に帰れる。思わず子供相手に本気出したよ。」
ナンパの為のイベント?なんてバカにしてたけど…
なんだか恥ずかしくなった。
この日から夢を語れる相手が見つかって
毎日が充実し始めた。
「あんなクラスしたいなぁ~」「こんな先生になりたい‼」って会話は尽きないの。
少しずつ電話やメールが増えて、恋をしている気になって
クリスマスには、二人でボランティアに参加して…
帰りの公園で"付き合おう"って言われたの。
忙しい毎日で、デートこそ出来なかったけど
一緒に託児所でアルバイトをして…行き帰りも一緒。
子供たちの話しは共通で楽しくって、盛り上がっていた
でも…
そう思ってたのは自分だけだったみたい。
バイトの帰りにいつも寄る公園。
滑り台とブランコしかない小さなもの。
6時を過ぎると子供たちは帰ってしまい、二人で話すには丁度いいの。
ベンチに座って、ジュース片手に話す時間が大好き。
「洸君のおむつがもうすぐ取れそうだね!」
「うん。」
「今日の新しい体操、今度唯にも教えて」
「だったら…今度の日曜日うちに来る?」
「あぁ~レポートがあるんだぁ~。
平日が遅いでしょう?休みの日にやることがいっぱいで…。ごめんね。」
「たまには、休日デートしない?」
「毎日会ってるのに??どうして?」
あれっ?
朋君が黙っちゃった。
そう思ってたら
「オレの兄弟何人いるか知ってる?」
突然の質問にびっくりしたけど…いつもと変わらない笑顔だった。
今夜は少し寒くて、秋の風を感じるなぁ~なんて思いながら
「ううん。…何で?」
ニッコリ笑って答たら
「好きな食べ物は?」ってまた質問。
変な朋君。…占いでも始めるのかな?
「う…ん……。カ…レー?…だった…かなぁ?…」
ちょっと自信がなくて、小さな声で答てみる。
「だったら萌ちゃんの好きな食べ物は?」
「おうどん!今夜もいっぱい食べてたよねぇ~。大きくなるよぅ‼」
自信満々で答て、笑顔で覗き込むと
…変わらない笑顔が返ってきた。
けど…
目がちょっと淋しそう。
なんだろう?
変わってないはずなのに…いつもとどこか違う彼に戸惑っていたら…
ギュッ‼
抱きしめられた!
えっ‼…??…?
突然の事に頭が真っ白に。
何で?…どうして?
もうすぐ一年になるけど、彼とは手すら握っていないの。
朋君には、言ったことはないけど…
人に触られたり近づき過ぎるのが苦手。
朋君は、薄々気付いていたのかなぁ~?
ムリに近付こうとしなかった。
だから安心してたのに。
「ちょっと~!朋君‼」
焦って体をよじったら、見えた彼の顔。
怒っているような…真剣なような…。普段見たことのない表情。
少しずつ近づいて
キスされる‼って思った瞬間。
「嫌っ‼」
胸を押していた。
あっ‼
時が止まったみたいに静かになって…
なんて言っていいか分からず、ただ下を見つめていたら…
「ごめん。…別れよう」
ポツンと一言、彼が呟いた。
呆然としている唯の横で…
「唯は、同じ夢をもったオレが好きだったんだよな。
恋愛とは違うのかな?なんて思いながら、なんとなく気付いてたんだけど…
一緒にいたかったから…言えなかった。
…もう、辛いんだぁ。
ごめんね。…別れよう」
キスを拒んだから?
恋愛とは違うの??
唯がダメだったから?
一緒にいて楽しいだけではダメなの?
好きなんだよ?…
朋君の事、恋だと思ってたよ?
ホントに好きな人ができたんだって…思ってるのに…
でも…
違うのかな?
「送ってやれなくて、ごめんな。」
別れを告げられたのは、唯の方なのに…別れようって言った彼の方が傷ついた顔をしてた。
…あんな良い人を傷つけちゃった。
辛いって言ってた。
何がダメだったのかなぁ?
わかんないよぅ。
ごめんね。
ごめんなさい。
今までの中で一番長く続いた男の子。
出逢いは
幼児教育学科の運動会。
短大の子や他校の学生、近所の子供たちが自由に参加して良い行事。
幼稚園の先生になったつもりで行うんだけど
近所の子供たちは良いとして、大人相手になんて…
それも冷やかし半分の同年代の学生になんて、恥ずかしくって。
「は~い!みなさ~ん。次はかけっこですよぉ
風船を持っている先生の所まで一生懸命走って下さいねぇ。」
このイベントに何か意味があるのかな?
30年も続いた伝統行事らしいけど…
他校の男の子たちは、ニヤニヤ笑いながら「は~い」なんて返事してる。
…バカみたい…
そんな中で
「先生、どの色の風船をもらっても良いの?」なんて
真面目な声で質問してくる男の人。
変な人。
そう思いながら
「はい。良いですよ。」なんて答たら
パンッ!
ピストルが鳴って、皆が走り出した。
「どの子にもらう?」
「お姉さんは風船配らないの?」
笑いながら、歩く速度で走って行く。
風船を持つ女の子にしか興味がない会話をしながら
このあとの合コンに行く女の子の品定めをしているらしい。
真剣に走ってるのは…
子供たちと、さっきの男の人。
ピンクの風船を受け取ると、入場門に消えて行った。
ピンク?
わざわざ選んで?
しかも、退場門じゃなくて入場門?
変な人。
思わず気になって、目で追うと
「あっ‼」
入場門に飾ってあった風船が1つ割れていた。
子供のイタズラかなぁ~
割れていたのは…そう!ピンク。
もしかして、これを直す為?
私たちですら気づかなかったのに。
やっぱり変な人だなぁ~って見てたら。
目が合っちゃった‼
イタズラが見つかったみたいに笑って
「オレも先生を目指してるんだ。小学校だけどね。
これって良いイベントだよね。一瞬で童心に帰れる。思わず子供相手に本気出したよ。」
ナンパの為のイベント?なんてバカにしてたけど…
なんだか恥ずかしくなった。
この日から夢を語れる相手が見つかって
毎日が充実し始めた。
「あんなクラスしたいなぁ~」「こんな先生になりたい‼」って会話は尽きないの。
少しずつ電話やメールが増えて、恋をしている気になって
クリスマスには、二人でボランティアに参加して…
帰りの公園で"付き合おう"って言われたの。
忙しい毎日で、デートこそ出来なかったけど
一緒に託児所でアルバイトをして…行き帰りも一緒。
子供たちの話しは共通で楽しくって、盛り上がっていた
でも…
そう思ってたのは自分だけだったみたい。
バイトの帰りにいつも寄る公園。
滑り台とブランコしかない小さなもの。
6時を過ぎると子供たちは帰ってしまい、二人で話すには丁度いいの。
ベンチに座って、ジュース片手に話す時間が大好き。
「洸君のおむつがもうすぐ取れそうだね!」
「うん。」
「今日の新しい体操、今度唯にも教えて」
「だったら…今度の日曜日うちに来る?」
「あぁ~レポートがあるんだぁ~。
平日が遅いでしょう?休みの日にやることがいっぱいで…。ごめんね。」
「たまには、休日デートしない?」
「毎日会ってるのに??どうして?」
あれっ?
朋君が黙っちゃった。
そう思ってたら
「オレの兄弟何人いるか知ってる?」
突然の質問にびっくりしたけど…いつもと変わらない笑顔だった。
今夜は少し寒くて、秋の風を感じるなぁ~なんて思いながら
「ううん。…何で?」
ニッコリ笑って答たら
「好きな食べ物は?」ってまた質問。
変な朋君。…占いでも始めるのかな?
「う…ん……。カ…レー?…だった…かなぁ?…」
ちょっと自信がなくて、小さな声で答てみる。
「だったら萌ちゃんの好きな食べ物は?」
「おうどん!今夜もいっぱい食べてたよねぇ~。大きくなるよぅ‼」
自信満々で答て、笑顔で覗き込むと
…変わらない笑顔が返ってきた。
けど…
目がちょっと淋しそう。
なんだろう?
変わってないはずなのに…いつもとどこか違う彼に戸惑っていたら…
ギュッ‼
抱きしめられた!
えっ‼…??…?
突然の事に頭が真っ白に。
何で?…どうして?
もうすぐ一年になるけど、彼とは手すら握っていないの。
朋君には、言ったことはないけど…
人に触られたり近づき過ぎるのが苦手。
朋君は、薄々気付いていたのかなぁ~?
ムリに近付こうとしなかった。
だから安心してたのに。
「ちょっと~!朋君‼」
焦って体をよじったら、見えた彼の顔。
怒っているような…真剣なような…。普段見たことのない表情。
少しずつ近づいて
キスされる‼って思った瞬間。
「嫌っ‼」
胸を押していた。
あっ‼
時が止まったみたいに静かになって…
なんて言っていいか分からず、ただ下を見つめていたら…
「ごめん。…別れよう」
ポツンと一言、彼が呟いた。
呆然としている唯の横で…
「唯は、同じ夢をもったオレが好きだったんだよな。
恋愛とは違うのかな?なんて思いながら、なんとなく気付いてたんだけど…
一緒にいたかったから…言えなかった。
…もう、辛いんだぁ。
ごめんね。…別れよう」
キスを拒んだから?
恋愛とは違うの??
唯がダメだったから?
一緒にいて楽しいだけではダメなの?
好きなんだよ?…
朋君の事、恋だと思ってたよ?
ホントに好きな人ができたんだって…思ってるのに…
でも…
違うのかな?
「送ってやれなくて、ごめんな。」
別れを告げられたのは、唯の方なのに…別れようって言った彼の方が傷ついた顔をしてた。
…あんな良い人を傷つけちゃった。
辛いって言ってた。
何がダメだったのかなぁ?
わかんないよぅ。
ごめんね。
ごめんなさい。