キンダーガーテン    ~温かい居場所に~
車に乗って、園を挟んで家とは反対にひと駅進んだ所に

先生の住む街がある。

園の直ぐ隣なのに、こっち側に来るのは初めて。

ここで過ごしてるんだ。

先生のいる世界だと思うと、それだけで…特別に見えてくる。

途中で寄ったコンビニでお弁当を買う先生に

「ご飯、作りましょか?」って聞いたら……

「唯ちゃんのご飯は魅力だけど…今日はダメ!
オレがついてて仕事が済んでないって分かったら
四人に何を言われるか、分かったもんじゃないからね。
今日は、お弁当にします。」って…

スッカリお仕事モードの先生は、全然甘くない。

初めてお邪魔させてもらったのに、玄関横の部屋に連れて行かれて

直ぐにノートを広げ始めたの。

あぁ~がっかり。

先生の昔のアルバム…見たかったなぁ~

心の中でブツブツつぶやいてみても、先生には届くことはなくって…

二人で黙々とペンをはしらせた。

途中、お茶を入れる先生について行こうとしたら

「お仕事してなさい!」って怒られちゃうし……つまんない。

だって~

このお部屋、お客さん用らしくて

泊まりに来た家族や友達が寝る布団が、押し入れに入ってるだけで…

なぁ~んにもないんだもん。

ねぇ~先生。

今度は、お仕事のない時に…また来させてくれる?

声に出せないおねだりを、心の中でつぶやいた。
                              
< 67 / 98 >

この作品をシェア

pagetop