キンダーガーテン    ~温かい居場所に~
30分はあっという間で…

着替えを済ませた子供たちは、お部屋で休憩中。

その間に唯も着替えに…

あぁ~‼………。

始まる前に、副園長先生の言葉に焦ってバスタオルを持ってくるのを忘れた…。

先生のせいで全身水浸しなのに…

このまま更衣室に入ったら怒られるし、先生に"取ってきて"なんて頼めないし…

どうしよう~

四人も今は保育中だしなぁ~

やっぱり…"ドンクさ過ぎ"って怒られても…先生に頼むべきかなぁ~

携帯を取り出してたら…

あっ⁉ラッキー!更衣室に明かりが点いてる。

表からは見えなかったけど、裏に回ったらしっかり明かりが漏れていた。

きっと、次の先生が着替えてるんだろうな。

外の小さな窓をコツコツ叩いたけど、返事はない。

これだと聞こえないのかなぁ?

……仕方ない。

「すみませ~ん!更衣室に誰かいますかぁ?」

少し大きめの声で呼んで、窓をコンコン叩いた。

「は~い。」

窓を開けてくれたのは…航君。

女の先生だと思ってたから…焦っちゃった。

「あっ⁉あの…。着替えの邪魔しちゃって、ごめんね。
航君の着替えが済んでからで良いんだけど…。
中にバスタオルを忘れちゃって…。
ピンクのタオルを取ってもらえないかなぁ?体が濡れてるから入れなくて。
お部屋に持って行くのを忘れたんだよね。
お願いします。」

後輩に失敗を話すのは…ちょっと恥ずかしいな。

「いいですよ。あっ!体が冷えるからこれを被ってて下さい。」って…

頭の上に、ふわっとタオルが降りてきた。

あっ‼濡らしちゃう‼

慌てて頭のタオルを取って待ってたら

バスタオルを手に、急いで帰って来てくれた。

「ありがとう、ごめんね。」お礼を言って、貸してもらったタオルを返した。

バスタオルで拭いていたら、窓から手が伸びて

さっき返したタオルが、再び頭の上に降ってきた。

ポンポンって頭を押さえて水気を取ってくれる航君。

「あっ…いいよ。…汚れるから…ありがとう。
それよりも、着替えが終わったら…交代してもらっていい?
子供たちが待ってるから…。」

「あっ、はい。そうですよね。どうぞ。」

去年までは男の子がいなかったから…更衣室は一つ。

女の子なら一緒に着替えるんだけど…さすがにそれは無理だから。

追い出す形になっちゃった。

「ごめんね。」ってもう一度謝って更衣室に入り

急いで着替えを済ませた。

部屋に帰る途中、メールの着信音が聞こえて…

「あっ先生だ。何だろう?」

保育中のメールは珍しいからびっくりしたけど

今は子供たちを待たせてるから、後で確認することにした。

その後も、無くした子供のパンツ騒ぎにバタバタして…

お弁当を食べさせる頃には、メールの事は頭からすっかり抜け落ちてて

……確認するのを忘れてた。

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