パノラマ・ビュー ~夜景の広がる部屋で~
『別に…ハワイじゃなくてもいいんだけど』

それからしばらくして佐野はそう呟いた。

『ディズニーの近くにね、素敵なホテルのプランがあって、すっごく行きたいんだけど一緒に行く子がいないんだ。ツインルームだから一人じゃ申し込めないっぽいし…』

他に親しい友達は、みんな彼氏がいるそうな。

『ねぇ本宮、一緒に行かない?』

と、佐野はとんでもない提案をした。

『はぁっ?』

『だって本宮とだったら、もし急に仕事が入ったって気を遣う必要ないし、ディズニーなら近場だから、仕事が押しても夜のうちにホテルに着けばいいんだし』

自分の思いつきが気に入ったらしく、やつの目が輝きだした。

『いや、むしろ日帰りでじゅうぶんだろ?』

オレがそう言っても即却下。

『やだ。前乗りするからこそ意味があるんだもん。非日常の空間に身を置いてリッチな気分を味わって…。で、翌日は開園と同時にディズニーを満喫する!』

さっきまで泣きそうになっていたくせに、佐野は俄然張り切りだしたっけ。

『え、でも、同じ部屋に泊まるのか?』

そこ大事。流れ的にはそーなるけど、まさかとは思うから聞いたんだ。

『うん、そーだよ。ダメ?』

『はぁっ?』

『大丈夫、わたし本宮のこと襲ったりしないからさ』

ポカンと口を開けたオレに、佐野はケラッと笑ってそう言った。

いや、知ってたけどね。佐野がオレを異性として見てないってことは。

『じゃー…行く? お前がいいならオレはいいけど』

自分で誘ったくせにオレが承諾すると、佐野は目をまん丸くした。『いいの?』って。

とまー、こんな具合にこの旅は決まったんだ。
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