パノラマ・ビュー ~夜景の広がる部屋で~
「んじゃ夕飯まで時間あるし、海のほうでも歩くか?」

ホテル近くの海の見える公園へ、佐野を散歩に誘った。
上手くすると、海に沈む夕日が見られるらしい。

ちょっとしたサプライズのつもりだったのに、潮風に吹かれ夕日に染まりながら、佐野はペチャクチャとさっきから喋りっぱなし。
会社のこと、家族のこと、飼っている子猫のこと。
近所のおじさんや芸能人の話まで。

「見ろよ、夕日」

オレがムスッと言うと「あ、ゴメン、ゴメン」なんて慌てて目をやる。

こいつ、人の気も知らねーで…。

昔から同期の中でも、佐野とオレは特に仲が良かった。
ウマが合うし部署も一緒。
結構厚い友情で結ばれている。

それがマズイ。その関係を壊したくなくなる。
そして、ときにはそれがスゲーつらかったりするんだ。

佐野はオレを男として見てはいない。
でもオレは佐野を…女として見ている。

まー棚ボタ的に手に入れたこの旅の間に、何とか気持ちを伝えようとは思ってるんだけど…前途多難。
佐野ってば驚くほどそーゆーノリじゃねーのな。

内緒で予約しておいた最上階のレストランでも同じで、豪華なディナーを前に、佐野はよく食いよく喋った。
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