パノラマ・ビュー ~夜景の広がる部屋で~
佐野がシャワーを浴びている間に、ドリンクの用意。
ウェルカムのスパークリングワインと、グラスを二つサイドテーブルに置いた。

佐野とはよく飲む。仕事仲間とみんなでってパターンが一番多いけど、ときには二人だけで飲み明かすこともあった。
オレが煮詰まってると佐野が誘ってくれるし、佐野が参っているとオレが誘う。

ん~…。
ゴロンとベッドに転がった。

佐野はどうなんだろ…?
こんなところで友達だと思ってた男に、急に告られたら怖いよな?
さっき小さく固まって見えた佐野を思い出して、決意が鈍る。

しばらくしてバスルームから出てきた佐野は、宣言通りホテルのバスローブを身につけていた。

「へへ、すっぴん見られちゃったぁ」

体を起こしたら目が合って、佐野が照れくさそうに笑う。

「ブッ」

シャワーで上気した佐野の顔はピンク色に光っていて、めちゃくちゃ可愛かった。
湯気がほやほや立っている。

「ハハッ、まるで風呂上がりの子供みたいだ」

可愛くなってゲラゲラ笑っていると…、ん? 普段なら言い返してくるはずの佐野が、じっと動かなくなった。

「佐野…?」

不審に思って声をかけると、佐野の目からポロッと涙が零れ落ちた。
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