パノラマ・ビュー ~夜景の広がる部屋で~
「だって…わかんないんだもん」

「な、何泣いてんだよ?」

「だって、どうしたらいいのかわかんない。せっかく二人で旅行に来たのに、プライベートな本宮は初めてで…。喋ってなければ恥ずかしくって死んじゃいそうだし」

「は?」

「これだってホントは恥ずかしいから…着たくないんだよ?」

と佐野はバスローブの襟元をギュッと掴んだ。

「だけど本宮に女として見てもらいたくて、決死の覚悟で着たんじゃん」

「け、決死の…?」

「バスローブだからね。下、何もつけてないんだからっ」

と、なぜか怒ったようにすごいことを言う。


「なのに本宮……笑った」


ポロポロと涙が音もなく零れる。

「いや、違うって。すげー可愛かったんだってば」

「可愛くて爆笑する人なんて、いないよ…っ」

しくしくと本格的に泣き出した佐野を、オレは腕の中へと引き寄せた。
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