君のまなざし
祐也は私立の中高一貫校で部活も勉強も頑張っているらしい。部活動が終わった後に居残りして自主練習。週に1日はここでトレーニング。帰宅後勉強して毎日寝るのは深夜になっているというのだ。

「私、勉強なんてしなくていいって言っちゃいました。睡眠時間の確保って大事ですよね。いつまでも寝ないで勉強してる事があって。宿題だけやって寝ちゃえって。宿題もしなくていいって言ったこともあるかも」

「そりゃ、すごいですね。祐也君はどうしました?」

「『はい、はい。わかったよ』って相手にしてもらえませんでした」

私、ナメられてるんですなんて少し口をとがらせた表情が何とも今までの笹森さんの印象と違う。
自分の中のイメージはクールビューティー。
でも、実際は明るく朗らかでひまわりのようだ。

話をしていて、どんどん彼女に引き込まれていく。

「例えば、オリンピックやW杯を目指していくのか、高校時代まではしっかり競技するけど、大学からは趣味程度にしてこの先社会に出るための勉強をするとか…あの子自身がどうしたらいいのかどうしたいのかハッキリわかってないみたいだし。私もどう助言したらいいのか」

母親として悩んでいるという。
すみません、今のそんな表情も魅力的だと思ってしまいました。
いかん、集中せねば。

「知り合いから留学の話を聞いたんです。それを聞いてそれもありかなと思い始めて。
祐也は今はクライミングをやりたい、将来何をやりたいかはまだ見つからないって言いながらも、でも、早くに海外に出てみたい、自分を試したいって気持ちもあるらしいんです。」

頬に手を当てて、憂い顔ではぁっとため息をつく。そんな仕草に見とれそうになる。

「私には留学することのメリットやデメリットがよくわからないし、そもそも何をどう調べたらいいのかどこに相談したらいいのかとか全くわかってないんですよね」

彼女は視線をテーブルに落としてうつむいてしまう。
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