君のまなざし
「留学ですか。それもいいんじゃないですか?祐也くんならできそうな気がします」
彼女を見つめてハッキリとそう言った。
「え?あの子にもできますか…ね?」
弾かれたように顔を上げて俺の目を見た。
「僕も留学してました。学生時代にカナダのバンクーバーでした」
「山口さんもですか?」
彼女のライトブラウンの瞳が大きくなる。
それから自分の体験談をした。
こんな話は仕事で知り合った人に話したことはないのに。
それからは話が弾み、気がつけば20分の面談予定はとうに1時間を超えていた。
留学の話から勉強、食事生活の話などいろいろと話をしていた。
「わっ!すみません、たくさん山口さんのお時間をいただいてしまって」
時計を見て驚いたようだ。笹森さんは慌てて立ち上がった。
「いえ、こちらこそ。申し訳ありません。笹森さんのこの後の予定は大丈夫でしたか?」
笑顔でかえす。
「私は今日はお休みでしたから。山口さんこそ大丈夫ですか?」
「はい、今日はこの後面談予定はいれていませんし。僕は人と話すのが好きで。お付き合いさせてしまいましたね。ありがとうございました」
貴女と話すのが楽しくて終われませんでしたというのが正解なんだけど、それは言えない。
「こちらこそ、本当にありがとうございました。とても勉強になりました」
にっこりと笑い、きれいなお辞儀をして応接室を出て行った。
店の出入り口まで見送り、フロントに戻るとにやけた木田と目が合った。
「何だよ」
「いえ、祐也の母親と面談だったんですね。
2人で並んで歩いてるとこなんて結構お似合いでしたよ。あの人いくつですかね~?中学生の息子がいるから結構いってるはずだけど、若く見えますよね。あの人相手なら昼顔とか略奪愛とかアリかも」
「は?バカか」
木田をジト目で見てから祐也の個人ファイルに面談票を入れる。
「だって、ずいぶん長かったんじゃないですか~?」
何だよ、木田のヤツしつこいな。
「俺、しばらく前からここにいましたけど、2人が応接室に入って行くのを見てません。だから、ずいぶん前から話していたってことでしょ?」
「はぁ?うるさいよ、仕事しろ」
「うわっ、怪しい」
こいつ、結構鋭い。
「余分な事考えるな。仕事しろよ」
「あ、鈴木さーん、鈴木さん!山口さんがー」
木田が遅番で出勤してきた鈴木を見つけて手を振って呼ぶ。
おい、まさか余分な事を言うつもりか。
「は?」
いきなり目をキラキラさせた木田に呼ばれて、鈴木は不審そうな顔をして近付いてきた。
「山口さんが笹森祐也の母親に惚れたらしいです!」
木田は大声で言い切った。
「へぇー」鈴木の口角があがったが目は全く笑っていなかった。
鈴木のきれいに整いすぎたその顔でその表情はかなり怖い。何を考えているの全くかわからない。
何を言ってるんだと木田の頭にげんこつを落とす。
痛いー!と騒ぐ木田は放置。
鈴木と目が合い、鈴木が一瞬ニヤッと笑った気がしたが、すぐにあの整った真顔に戻った。
何なんだ、全く。
彼女を見つめてハッキリとそう言った。
「え?あの子にもできますか…ね?」
弾かれたように顔を上げて俺の目を見た。
「僕も留学してました。学生時代にカナダのバンクーバーでした」
「山口さんもですか?」
彼女のライトブラウンの瞳が大きくなる。
それから自分の体験談をした。
こんな話は仕事で知り合った人に話したことはないのに。
それからは話が弾み、気がつけば20分の面談予定はとうに1時間を超えていた。
留学の話から勉強、食事生活の話などいろいろと話をしていた。
「わっ!すみません、たくさん山口さんのお時間をいただいてしまって」
時計を見て驚いたようだ。笹森さんは慌てて立ち上がった。
「いえ、こちらこそ。申し訳ありません。笹森さんのこの後の予定は大丈夫でしたか?」
笑顔でかえす。
「私は今日はお休みでしたから。山口さんこそ大丈夫ですか?」
「はい、今日はこの後面談予定はいれていませんし。僕は人と話すのが好きで。お付き合いさせてしまいましたね。ありがとうございました」
貴女と話すのが楽しくて終われませんでしたというのが正解なんだけど、それは言えない。
「こちらこそ、本当にありがとうございました。とても勉強になりました」
にっこりと笑い、きれいなお辞儀をして応接室を出て行った。
店の出入り口まで見送り、フロントに戻るとにやけた木田と目が合った。
「何だよ」
「いえ、祐也の母親と面談だったんですね。
2人で並んで歩いてるとこなんて結構お似合いでしたよ。あの人いくつですかね~?中学生の息子がいるから結構いってるはずだけど、若く見えますよね。あの人相手なら昼顔とか略奪愛とかアリかも」
「は?バカか」
木田をジト目で見てから祐也の個人ファイルに面談票を入れる。
「だって、ずいぶん長かったんじゃないですか~?」
何だよ、木田のヤツしつこいな。
「俺、しばらく前からここにいましたけど、2人が応接室に入って行くのを見てません。だから、ずいぶん前から話していたってことでしょ?」
「はぁ?うるさいよ、仕事しろ」
「うわっ、怪しい」
こいつ、結構鋭い。
「余分な事考えるな。仕事しろよ」
「あ、鈴木さーん、鈴木さん!山口さんがー」
木田が遅番で出勤してきた鈴木を見つけて手を振って呼ぶ。
おい、まさか余分な事を言うつもりか。
「は?」
いきなり目をキラキラさせた木田に呼ばれて、鈴木は不審そうな顔をして近付いてきた。
「山口さんが笹森祐也の母親に惚れたらしいです!」
木田は大声で言い切った。
「へぇー」鈴木の口角があがったが目は全く笑っていなかった。
鈴木のきれいに整いすぎたその顔でその表情はかなり怖い。何を考えているの全くかわからない。
何を言ってるんだと木田の頭にげんこつを落とす。
痛いー!と騒ぐ木田は放置。
鈴木と目が合い、鈴木が一瞬ニヤッと笑った気がしたが、すぐにあの整った真顔に戻った。
何なんだ、全く。