君のまなざし

また茉優と喧嘩になった。

きっかけは外食のお店のチョイスだったけど、お互いのすれ違っていた心は、ささくれ立った言葉でお互いを更に傷つけ合ってしまう。
もう修復できないところまできていた。

茉優が早く結婚したがっていることは何となくわかっていた。
気持ちはわかるが、今まで付き合ってきて、俺には彼女との結婚生活は考えられなかった。

自分の今の仕事に自信が持てないってだけじゃない。
自分の結婚相手は茉優でいいのか?
茉優の相手は俺でいいのか?

茉優が結婚したいのは相手が俺だからなのか?ってことも疑問だった。ただ早く結婚したいだけで、たまたま今付き合っているのが俺だったからなのか?とか。

知り合って付き合う前から「早く結婚したいの」って言っていた。

茉優は25才。ひとり暮らしをしているが、実家からかなりの金銭的支援を受けて生活している。
大手企業のOLとしての給料は安くはなかったはず。

しかし、マンションの家賃は実家負担。
ブランドバッグに服、靴や化粧品、友人と年に何回かの海外旅行と生活はかなり派手な方だ。

茉優は自分の稼いだお金をやりくりして生活していたわけじゃない。かなりの額が実家から出ていた。
それを当たり前と思っている彼女の金銭感覚が自分とは違っていた。
外食は雑誌で紹介されたようなお店じゃないと不機嫌になり、記念日にはブランドショップに連れて行かれねだられる。

先日のように家で料理を作るなんて滅多にない。

一緒にいるのは楽しかったが、結婚となると違う気がする。何というか、価値観の違い。

彼女が急いで結婚相手を探しているのなら、早く手放してあげなければいけない。
そう思った。

「ごめん、俺はまだ結婚とか考えられない。茉優が早く結婚したいのわかってるから。別の人を探して欲しい。本当にごめん」

当然ながら茉優は怒りだした。
自分なりに誠実に話をしたつもりだが、理解できないらしい。

「洋介の給料が少ないならうちの実家から援助してもらうから」と言い始める。

「それじゃ、大人としてダメだろ」
そういうことじゃないんだ。

お金がないならないなりに身の丈に合った生活をすればいいし、俺は自分の将来のために実はかなり貯蓄をしていた。学生時代に仲間と投資をして当たっていたから茉優には言っていないが、お金がないわけではない。

お金があると言えば頻繁に海外旅行だなんだと行きたくもない旅行や高級ホテル、高級レストランでの外食に度々連れ出されていたことだろう。

浪費するなんてとんでもない。
自分や将来の自分の家族のため、仕事のために貯蓄したんだ。
本当に必要なときには出し惜しみしない。
使い方を間違えてはいけない。
茉優がそれをせこいと思うならそれでもいい。
自分の隣には自分を理解してくれる人にいて欲しいから。

「結局安月給で私を養うのが無理だってこと?それとも養うのが嫌だってこと?」
「だから、そういうことじゃない」

その後も諭すように話をしたが、茉優の理解は得られなくて。
結局「浩介は見た目だけの男」「安月給の甲斐性なし」と
なじられた。
「もういい。二度と会わない。もう顔も見たくない。浩介なんて見た目がいいだけだったわ」
そう言って去って行った。

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