君のまなざし

誤解だから

大学時代の恩師に呼ばれて、有給休暇を取って久しぶりに母校に行った。
教授の研究室で話し込んでしまい、大学を出る時には21
時を過ぎていた。

友達が経営している小料理屋で食事をして帰ろうと駅前広場から繁華街に向かい歩いていると、前から見たことがある女の子が走って来る。

真冬なのにコートを羽織らず手に持ち、花柄のワンピースの裾が乱れるのも気にせず、ハイヒールで走っている姿に驚いた。

「まいちゃん」
呼びかけると立ち止まりキョロキョロと辺りを見回している。


「まいちゃん、こっち」
前方にいる俺に気が付いて、ほっとしたような表情になった。
何かあったのか、心配になってまいちゃんの近くに向かうと、まいちゃんもこちらに向かって歩き出そうとした。
その途端、
歩道の段差につまづいたのか転びそうになり、慌ててまいちゃんを両手で支える。

「大丈夫？」
俺に支えられて安心したのか、ハイヒールで走っていたから疲れていたのか、今度は両脚に力が入らなくなってしまったように崩れ落ちそうになった。

支える力を強めて彼女を抱えあげるようにすると、やっと足の力が戻ったようで俺を見上げ微笑みを浮かべた。

「ありがとうございます、だいじょう…」まいちゃんの声は最後まで聞く事が出来なかった。
「あー！」
という声にかき消されたから。

まいちゃんが固まってしまい、声が聞こえた方向を見ると
祐也がいた。

「知ってるヒトがイチャイチャしてるの初めて見た」
興奮している祐也。その隣には口に手を当てて驚いている絵里子さん。
そして絵里子さんの隣には鈴木がいた。

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