君のまなざし
翌日の木曜日。
祐也のトレーニングの送迎に絵里子さんは来なかった。

トレーニングが終わって迎えに来たのは40才半ば過ぎの長身で高級そうなスーツ姿の貫禄のあるイケメン男性だった。
どこかの企業の役員とか経営者とか。
とにかく上に立つ者の雰囲気がある。
そして、かなり整った顔立ちでどことなく祐也に似ている気がする。

「祐也、終わった？帰れるか？」
「終わったよ。迎え、ありがとね」
「いいよ、こっちの都合だったしな」
祐也は照れ臭そうにし、イケメン男性は優しく笑っていた。

誰だろう。
このイケメン。
もしかして、彼が祐也の父親なんだろうか。
じっと見つめているとイケメン男性と目が合ってしまった。

かなり気まずい。

「お疲れさまでした」

「こちらこそ。祐也がいつもお世話になってます。ありがとうごさいます」
嫌みなくきれいに挨拶され余計に気まずい。

そして２人は並んで帰って行った。


どうしてなのか、
絵里子さんの周りには親しい男性が多くないか？
鈴木もそうだが、先日の謎の若い男や今のイケメン。

恋心を自覚した俺にはキツいことこの上ない。
どんな関係ですかと聞けたらどんなにいいだろう。
そんな資格もないんだなと思うと更にやるせない。

昨夜の一件だって誤解されたままになっている。
ため息しか出ない。



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