君のまなざし
「そうそう。彼ったら彼女にでれでれ」
きゃーと盛り上がる。
「2人はお似合いよ。女性が年上だからってそれが何?」
女性客のひとりが茉優に言った。
騒ぎに気付いた茉優の連れが慌ててこちらに来た。
「とりあえず、戻ろう」と黙って俺をにらみつける茉優を自分たちのテーブルに連れて行く。
「ごめんなさい。本当にお騒がせしました」
女性グループに絵里子さんが丁寧に頭を下げるので慌てて一緒にお辞儀をする。
「すみませんでした」
今度こそレジに向かおうと歩き出すと、女性グループの1人につんっと袖を引っ張られた。
えっと振り向く。
「お兄さん、また彼女と一緒にこの店に来てね。私たち、よくここで女子会してるの。あの彼女にまた会いたいからさ」
小声で言われた。
そうか、そうだよな。
この女性グループも絵里子さんに惚れちゃったか。
「はい。ぜひ」にっこりとして、急いで絵里子さんを追ってレジに向かった。
さっきまで茉優に嫌な目にあわされたというのに、絵里子さんをほめられて気分がよくなった。
店を出てすぐに絵里子さんに謝った。
「すみませんでした。俺のせいで嫌な目に合わせてしまって」
しっかりと頭を下げた。
下げたままでいると、急に絵里子さんが俺の右腕に腕を絡ませてきた。
「帰りましょ」
顔を上げると絵里子さんが心配そうに俺の顔をのぞき込んでいた。
目が合うとにっこりとしてもう一度「か、え、ろ」と言って俺を引っぱるようにして歩き出した。
俺の右腕に腕を絡ませたまま。
黙ったまま歩いているのが不安で横にいる絵里子さんを見るとこちらを見てまたにっこりと笑ってくれる。
怒ってないのかな。気分悪くしたよな。
あんなひどい言われ方をして。
改めて茉優に怒りを感じる。
「本当にすみませんでした」
もう一度絵里子さんに謝る。
絵里子さんは俺の腕に絡めていた自分の腕を離して今度は少しさみしそうに笑った。
「本当にいいのよ」
そんな彼女の表情を見てさらに辛くなる。
「タクシー拾って送りますね」
そう声をかけると絵里子さんはピタッと立ち止まり、チラッと俺の顔を見てすぐに視線を大通りに向けた。
「あ、いいの、。1人で大丈夫。ここから山口さんちは歩いてすぐでしょ。私は1人でタクシー乗って帰るから平気」
軽く拒否されたようでかなり焦る。
「ちゃんと送ります」
「本当にいいの。大丈夫だから」
そして、通りがかったタクシーをさっと止めた。
「でも」と送ろうとするが、
「だめ」と言われた。
絵里子さんからの『だめ』にショックを受けて呆然とする。
「だって」
「え?」
「だって、このまま一緒にいたら私が襲っちゃいそうだもん」
ぐいっといきなりシャツの胸元をつかまれて引っ張られた。
唇に暖かく柔らかい感触がしたのは一瞬。
絵里子さんは俺からサッと離れて開いたドアからタクシーに乗りこんでいた。
「コムスメ、ムッカツク」
とひと言。
閉じたドアのガラスの向こうには笑って手を振る絵里子さんが見えた。
走り去るタクシーをぼーっと見送った。
やっぱり、絵里子さんはオトコマエだ。
祐也の言う通り。
惚れないはずがない。
キス
いや、いや。それより私が襲っちゃいそうだって言っていた。
ツッコミどころが満載で、取り残された俺はどうしたらいいんだよ。
ハハッ
声を出して笑った。
男前の絵里子さんに完敗。
ぐずぐず悩んでた俺の遙か上を越えていく。
悩んでた俺は大バカ者だ。
きゃーと盛り上がる。
「2人はお似合いよ。女性が年上だからってそれが何?」
女性客のひとりが茉優に言った。
騒ぎに気付いた茉優の連れが慌ててこちらに来た。
「とりあえず、戻ろう」と黙って俺をにらみつける茉優を自分たちのテーブルに連れて行く。
「ごめんなさい。本当にお騒がせしました」
女性グループに絵里子さんが丁寧に頭を下げるので慌てて一緒にお辞儀をする。
「すみませんでした」
今度こそレジに向かおうと歩き出すと、女性グループの1人につんっと袖を引っ張られた。
えっと振り向く。
「お兄さん、また彼女と一緒にこの店に来てね。私たち、よくここで女子会してるの。あの彼女にまた会いたいからさ」
小声で言われた。
そうか、そうだよな。
この女性グループも絵里子さんに惚れちゃったか。
「はい。ぜひ」にっこりとして、急いで絵里子さんを追ってレジに向かった。
さっきまで茉優に嫌な目にあわされたというのに、絵里子さんをほめられて気分がよくなった。
店を出てすぐに絵里子さんに謝った。
「すみませんでした。俺のせいで嫌な目に合わせてしまって」
しっかりと頭を下げた。
下げたままでいると、急に絵里子さんが俺の右腕に腕を絡ませてきた。
「帰りましょ」
顔を上げると絵里子さんが心配そうに俺の顔をのぞき込んでいた。
目が合うとにっこりとしてもう一度「か、え、ろ」と言って俺を引っぱるようにして歩き出した。
俺の右腕に腕を絡ませたまま。
黙ったまま歩いているのが不安で横にいる絵里子さんを見るとこちらを見てまたにっこりと笑ってくれる。
怒ってないのかな。気分悪くしたよな。
あんなひどい言われ方をして。
改めて茉優に怒りを感じる。
「本当にすみませんでした」
もう一度絵里子さんに謝る。
絵里子さんは俺の腕に絡めていた自分の腕を離して今度は少しさみしそうに笑った。
「本当にいいのよ」
そんな彼女の表情を見てさらに辛くなる。
「タクシー拾って送りますね」
そう声をかけると絵里子さんはピタッと立ち止まり、チラッと俺の顔を見てすぐに視線を大通りに向けた。
「あ、いいの、。1人で大丈夫。ここから山口さんちは歩いてすぐでしょ。私は1人でタクシー乗って帰るから平気」
軽く拒否されたようでかなり焦る。
「ちゃんと送ります」
「本当にいいの。大丈夫だから」
そして、通りがかったタクシーをさっと止めた。
「でも」と送ろうとするが、
「だめ」と言われた。
絵里子さんからの『だめ』にショックを受けて呆然とする。
「だって」
「え?」
「だって、このまま一緒にいたら私が襲っちゃいそうだもん」
ぐいっといきなりシャツの胸元をつかまれて引っ張られた。
唇に暖かく柔らかい感触がしたのは一瞬。
絵里子さんは俺からサッと離れて開いたドアからタクシーに乗りこんでいた。
「コムスメ、ムッカツク」
とひと言。
閉じたドアのガラスの向こうには笑って手を振る絵里子さんが見えた。
走り去るタクシーをぼーっと見送った。
やっぱり、絵里子さんはオトコマエだ。
祐也の言う通り。
惚れないはずがない。
キス
いや、いや。それより私が襲っちゃいそうだって言っていた。
ツッコミどころが満載で、取り残された俺はどうしたらいいんだよ。
ハハッ
声を出して笑った。
男前の絵里子さんに完敗。
ぐずぐず悩んでた俺の遙か上を越えていく。
悩んでた俺は大バカ者だ。