君のまなざし
鈴木の父親は外科医。絵里子さんの以前の勤務先の病院で一緒に働いていた関係で、鈴木が小学生の頃から家族ぐるみの付き合いをしていたという。

そりゃあ仲良しなはずだ。

鈴木が飲み会でまいちゃんと張り合って何回か絵里子さんを抱き寄せたりしているのを見ていたが、2人の間に男女の危うさのような空気を全く感じなかったのはそのせいか。
一回り近い年齢差もあるけど、それだけじゃない。
家族に近い関係。

絵里子さんが祐也と抱き合っているのを見ているような感じか?まぁ、そんなのも見たことないけど。

とにかく、確かに最初は驚いたけど、そのうちくっついている2人を見ても嫉妬心のようなものを感じなくなったのだ。

勘違いして騒いでいたのは絵里子さんの後輩のまいちゃん達と木田と井出だな。
美樹さんや柴田は俺と同じ感覚だっただろう。

「鈴木先生のご自宅はこの上なの」
天井を指さす。
入れてもらった暖かい緑茶を飲みながらダイニングテーブルで向かい合う。

「せっかく凌くんが買ってきてくれたお弁当だから」
鈴木と祐也が外に食べに出て行ってしまい、余ると困るってことで祐也の分を俺が食べることになった。

食べながら、今まで知らなかった絵里子さんの事情を少しだけ聞いた。

離婚して5年になること。

鈴木の父親がいる総合病院を辞めて、元の嫁ぎ先の親族が経営する会社の健康管理部門で働いていること。

実家の両親は他界していて現在は兄夫婦が住んでいることなど。
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