君のまなざし

それから、1年半の留学の後帰国した山口さんと母さんは仲良く過ごしていた。

まぁ、俺の勧めもあって母さんは山口さんの留学中にたびたび海外出張と称して会いに行っていたんだから仲も深まっているんだろう。



そして来月、いよいよ2人は入籍する。
俺も『笹森祐也』から『山口祐也』になる。

笹森の後継者になるのかならないのかは別として、一度笹森から離れた方が安全だとじいちゃんの判断だ。

実際には親父がじいちゃんを説得したのだけれど。
じいちゃんは母さんと俺が笹森でなくなることをイヤがった。
でも、母さんが会社を辞めずに今後はイチ社員でなく経営側に積極的に参加することを知ると了承したんだ。

結婚式と披露宴はひっそりと親しい人だけでやるけど、二次会は別の日に大々的にやるらしい。
理由を聞いたら、『二次会は若い人達の出会いの場だから』だって。

しかも、よくよく聞けば名目は結婚のお披露目パーティーでも二次会でもない。
山口さんが恩師に誘われて参加したアスリート育成強化研究センターに笹森の本社がスポンサー契約することになったお披露目らしい。

笹森の会社を挙げて社員のための婚活パーティーとスポンサー企業としてのビジネスパーティー。

山口さんの関係者は友人知人スポーツトレーナーだけでなく未婚既婚問わずプロアマのアスリートも招待するらしい。
そちらは笹森の会社から招待されている別の企業からスポンサー契約してもらえるようアスリートと企業の出会いの場にするつもりらしい。

そして、笹森の会社の社員たちと母さんの知り合いの医療関係者たちと独身アスリートとトレーナーたちとの出会いの場。社内には独身男女が多くいるし、医療関係者にも独身男女がいる。どんな組み合わせでも出会いがあれば実を結ぶことがあるだろう。

これを企画立案したのは母さんだっていうから驚きだ。
あの人はビジネスの才能もあったのか。

前の旦那の会社で前の旦那の親族に囲まれてバリバリと働くという女。
それを笑って許す山口さんってどんだけ懐が深いんだ。
安心して母さんを任せられる。というか、お願いします。
返品もしないで下さい。

留学の話をしたら、母さんには大泣きされ山口さんにはすごくがっかりされた。
「胸を張って祐也の保護者だって言いたかった」「祐也のパーソナルトレーナーをやりたかった」らしい。

ごめんね、数年したら必ず帰って来るよ。それまで新婚生活を楽しんで。
俺も甘えてないで自分の将来を見つめてみたいんだ。
そして、
いつか見つける。
俺だけを見つめて欲しいと思える女性を。


fin
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