君に、一年後の約束を。
一年前の約束
一年前、付き合っていた彼氏に浮気されて別れた私。
三年も付き合って、いずれ結婚するんだろうな、なんて考えていた相手だったから、相当落ち込んだ。
そんな私を見かねて、同期の岳琉(タケル)が飲みに誘ってくれたのは、丁度一年前の今日。
初めは気が進まなかったけれど、気心の知れた相手と肩肘張らずに過ごす時間は楽しくて気が紛れて。
最終的には、強引に連れ出してくれた岳琉に感謝していた。
気取らない居酒屋で思う存分飲んで、酔っ払って。
楽しい気分のまま流れ込んだ二次会で連れて来られたのは、雰囲気の良いホテルのバー。
それまでの騒がしさが嘘のように、場違いにも感じるしっとりとした静かな空間に、居心地の悪さを感じながら。
それでも、本当は。
目の前に座る男が、見たことがないほど真剣な表情をしていることが、居心地悪さを感じる一番の原因だった。
『なんか、機嫌悪い?』
漂う重い空気をかき消したくて、恐る恐る口を開けば。
『いや・・・』
その男は、漂う雰囲気をそのままに、否定の言葉を口にした。
『俺、ずっとお前に言いたい事があったんだ』
『な、なに?』
『今までは、言う事すら諦めてた。でも、やっと言える』
『だから、なにを、』
『俺、莉緒が好きだ』
『・・・は?』
思いもしなかった言葉が聞こえて、ポカンと口を開けたまま相手の顔を見つめた。
『じょ、冗談?』
やっと言えた言葉はそれだった。
だって、それ以外考えられない。
確かに同期の中で、岳琉とは一番仲が良い。
とは言っても、それは恋愛感情とはかけ離れたもので、あくまで同期という関係の元に成り立っていた関係だったはずなのに。