君に、一年後の約束を。
『岳琉のそういう言葉は、一番信じられない』
『酷い言い方だな』
『今までの自分の行い、考えてみなさいよ』
『まぁ、確かに』
悪びれることなく納得するが、岳琉らしい。
『お前意外、どうだってよかったんだよ』
『え?』
『手に入らない女を好きになったんだ。やけになりたくもなるだろ』
『・・・自分が、なに言ってるか分かってる?』
分かってるよ、と首を竦める男は、しばらく夜景に視線を投げて、再びこちらに鋭い瞳を向けて来た。
『じゃあ、俺がなにをしたら信じられる? 毎日、好きだと言ったらいい? 跪いて、今までのことを許してと懇願したらいい? お前が望むことなら、なんだってするよ』
『そんなこと、して欲しくない』
『信じられないって言うなら、せめて信じられる基準を教えろよ。可能性くらい、残してくれてもいいだろ』
いつも自信満々な岳琉に似合わない、懇願するようなその台詞。
たぶん、酔っていたのだろう。
この男の本気、というものを試してみたくなったのかもしれない。
ほんの少しの悪戯心が顔を出していた。
『一年後・・・』
思い切って絞り出した声は、掠れていて聞こえるか分からないほど小さな声だったはずなのに。
『一年後、なに?』
男は、聞き逃がすことなく言葉を拾う。
『一年後、同じ台詞が言えるなら』
『・・・お前を、好きだって?』
はっきり言われて、頬に熱が集まった。
向けられる視線に耐えきれなくて、視線を逸らして頷く。
一年後の気持ちを、信じていた訳じゃなかった。
この男が、馬鹿らしいと投げ出してくれるなら、それでも良かった。
それなのに。
『分かった』
岳琉は、あっさり頷いて。
『一年後、この場所で、同じ台詞を言ってやる』
不敵な笑みを浮かべて、自信満々にそう言い放った。