君に、一年後の約束を。


信じられない、はずがない。

この一年、この男は真摯な態度を見せてくれた。
いつの間にか、遊び人という噂も消え失せて。
私にだけ、真っ直ぐに気持ちを向けてくれるようになっていた。

いつだって、向けられる言葉や態度に、嘘はなかった。


私は、ゆるゆると首を振る。

岳琉が安堵の息を吐く音が聞こえた。


「じゃあ、これでやっとスタートライン?」


少し意地悪にも聞こえるその声が憎たらしい。
いつだって人の気持ちを見透かして、余裕のある態度を見せる男。

その余裕を、崩してやりたくなった。


「冗談でしょ。もうとっくに走り出してる」

「・・・は? え、それって、どういう、」

「私も、岳琉が好き」


思い切って告げた言葉に、男が文字通り目を丸くする。


「嘘、だろ・・・」


呟いたまま、絶句して。
直後に口を覆って顔を真っ赤にした男の反応に驚いたのは、私の方だ。


「顔、真っ赤なんだけど」

「シャンパン、一気飲みしたからだろ」

「・・・そうだよね」


珍しく視線を彷徨させて動揺する岳琉の姿に、笑みが漏れる。

もしかしたら私。
この男に、物凄く好かれているのかもしれない。

くすくす笑う私を、拗ねた表情で睨んでくる男を見て思った。


もっと、岳琉のいろんな表情が見てみたい。

この男と、ここから始めてみるのもいいかもしれない、って―――――。




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