永遠なんてないこの世界で、きみと奇跡みたいな恋を。
「ふう……。お前、どんな気持ちであの場所にいたんだ?」
「………空にも……朝、昼、夕で見せる顔が違うように、街も、人にも、私のまだ知らない世界がきっとある」
「ん?」
病室で、空を見上げながら考えていた事。
この命が消えてしまう前に、私の知らない世界を知りたい。
絶対なんてないこの世界だからこそ、そう強く願った。
「私は……この世界の美しさを知らずに死ぬことが、嫌だなって……思ってたよ」
私の知らない誰か、モノがある場所へ。
私が生きる世界はどんな世界なのか、知らずに死ぬことだけはいやだった。
「それで、沖ノ島の海……なのか?」
「うん、たまたま病院の旅行雑誌コーナーを見てたら、沖ノ島の海を紹介しているページがあってね」
お母さんに頼んで、同じ雑誌を買ってきてもらった。
今思えば、お母さんに何か頼み事をしたのも、これが初めてかもしれない。