永遠なんてないこの世界で、きみと奇跡みたいな恋を。
「いただきます」
「「いただきます」」
文さんの挨拶につられるように、私達は食事を始めた。
1口目に食べたほうれん草のお浸しは、やっぱり懐かしいような、優しい味がした。
「……お母さん………」
ふと、お母さんが作ってくれたご飯を思い出す。
文さんが作ってくれた料理とは少し違うけど、お母さんのご飯もいつも美味しくて、優しかった。
携帯の電源を切っているから、お父さんとお母さんが今どんな気持ちで私を探しているのか、分からない。
きっと、心配をかけちゃってるんだろうな……。
「……風花ちゃん、夏樹ちゃん。私はねぇ、娘も大きくなって家を出てったから、2人が来てくれて嬉しいのよ」
「……文さんは、ここでずっと1人で暮らしてるんですか?」
なっちゃんが白米の入った茶碗に手を添えたまま尋ねる。
「そうねぇ……かれこれ15年くらいかしら。でもねぇ時々、東京から娘と孫も遊びに来てくれるし、寂しくは無いのよ」
文さんが笑顔で話す。
文さんにとって娘さんや、お孫さんがどれだけ大切な存在なのかが分かった。