聖夜にセレナーデ
呼ばれてフロントに駆けつけると、久しぶりに耳についた流暢なフランス語。
そういえば、さすがのチーフもフランス語には対応できないんだった。
いつもバリバリの英語でお客様と会話をしているから、忘れてた。
「お客様、どうされましたか。」
横から笑顔で入ると、チーフのホッとした顔が見れた。
チーフのポーカーフェイスが壊れるなんて、珍しい事もあるもんだ。
「日本は初めてでね、よく知らないんだよ。
明日の会議のある会場の場所を知りたいんだ。」
「ああ、それでしたら…」
7年ぶりのフランス語。
聞き取れるか少し不安だったけれど、大丈夫みたい。
苦労して身につけた言語って、いつになっても出てくるものなのね。
メルシー!
チェックインを済ませたその男性はニコッと笑って客室へと行った。