別れるための28日の蜜日
「ううん、いいの。律人が無理なら知り合いに頼むつもりで、もう話もしてあるから」

「知り合いって、誰?斎藤?飯島?」

「うちの課の町田さん。2つ先輩の主任さんなんだ」

「名前、聞いたことないんだけど」

会話が進む度にどんどん不機嫌になっていく律人はもう、軽く喧嘩腰だ。

「そうだっけ?ずっと総務で一緒だし、良い人だよ」

「それも聞いてない」

律人が何にイラついてるのか分かっていて、ワザと直球な返事を避けた。町田さんの存在に律人の心がざわつけばいい。

「とにかく、明日、戻るから。さ、早く食べないと遅刻しちゃう」

律人を不満げな状態のまま、会話を終了させた。

これでいい。これで律人は私を疑ったはずだ。このまま別れの流れに持ち込んだら、律人の苦しみも少しは軽くなるだろう。

一緒に食べる最後の朝食はヒドいものになっちゃったけど‥‥。
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