別れるための28日の蜜日
2月27日
接待ゴルフの時、律人は私を起こさない様に静かに用意して出かけて行く。そんなトコロさえ気遣えるのは律人が優しいから。

だから今日も律人は1人で起きて、静かに用意する。私はベッドの中でその気配を感じてつつ、じっとしていた。

最後に「いってらっしゃい」を言いたい気持ちはあるけど、そんな事したってこの後を考えればマイナスでしかない。
だいたい、浮気して乗り換えるようなオンナには早朝起きてお見送りするような甲斐甲斐しさはないんだから。

「いってらっしゃい」

玄関の扉が閉まる音に小さく呟いてから、えいっと布団をはねのけた。

うじうじしてる時間はないし、そんな事してたら自分に酔って泣いてしまいそうだ。

「30オンナは意外と強いんだから」

自分を奮い立たせるように呟いて、行動を開始した。


律人に不審がられないように、昨夜した荷造りは1ヶ月前に持ち込んだものだけだ。それ以前から部屋に置いていた私の私物にはまだ手を付けていない。
< 115 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop