別れるための28日の蜜日
町田さんが車を出してくれなかったら、タクシーにギュウギュウに詰めて運ぶしかなかっただろう。

町田さんが隣でにこやかに手伝ってくれて、私の気持ちだけでなくお財布もたすかった。

「実は心機一転ついでに引っ越しもしちゃおうかと思ってて‥‥」

へへっと笑いながら言うとはぁーっとため息をつかれた。

「思って、じゃなくて思いついて、でしょ?ホント、プライベートは計画性ないんだね」

「へへっ‥‥」


‥‥図星すぎて乾いた笑いしか出ないや。


「何?彼氏さんがすがって来れないように引っ越しするって?そんなに彼氏さんに愛されてる自信あるの?そんな自信あるなら、でーんと厚かましく彼の人生に乗っかれば良かったのに」

町田さんは皮肉っぽく言うけど、それは違う。

「自信、ないですよ。ないから引っ越しするんです。だって、こんな別れ方しといて、全然追いかけて来てくれなかったら、流石にボキボキに心折れちゃいますから」
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