別れるための28日の蜜日
付き合って2年だし今年はお互い30歳になる、と思えば「大事な話」は脳内変換で「プロポーズ」になる。

誕生日でも記念日でもない日にプロポーズなんて彼らしい!と頭を沸かせていたあの日の自分をぶん殴りたい。




いつものように仕事帰りに寄った律人のマンションで、私は顔をにやけさせない事に必死だった。

ラグに座った律人は落ち着かずに挙動不審だったけど、それさえプロポーズに緊張してるように見えた。‥‥あの日の私はやっぱり、ぶん殴るだけでは足りない。

「あ、のさ、俺の話をいったん最後まで聞いて欲しいんだ」

チラチラとわたしを見つつ、律人の視線は下を向いたままだ。

「俺、春からじいさんの会社に戻る事になった。前からそういう約束で、さ。ホントはもうちょっとこっちで頑張りたかったんだけど、向こうの都合もあってさ」

突然始まった、あまりに予想外の話に私は頷くことも出来ない。
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