別れるための28日の蜜日
その勢いのまま、帰宅後は着替えと調理と続ける。今日は回鍋肉。少し豆板醤を入れてピリ辛にするのが律人の好みだ。

急いだら、調理が終わってもまだ律人が帰って来ていない。汁物はまだだけど、先にお風呂掃除を済ませてしまおうか。

お風呂の掃除もしていたら玄関のドアを開ける音がした。

玄関まで出迎えたいけど、あと少しのお風呂掃除はやっちゃいたい、とバタバタしていたら、急いだ足音と同時に浴室のドアが開いた。

「こんなとこにいた!」

「あ、おかえりー。」

あまりの勢いにキョトンと答えると、律人がふにゃっと笑った。

「帰って来たら、電気付いてて夕飯の匂いもしてるのに百合がいなくてびっくりした」

「ただいま」と続ける律人が着替えるために浴室から出ていくのをみつめながら、しばらく動けなかった。


なんだなんだなんだーっ!あの甘え方!
靴があって、電気付いてて人の気配もあったらいなくて心配って普通、思わないでしょ!

あんな律人初めて見た‥‥‥。
< 56 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop